2期/ヨハン編
K11 夜半〈よわ〉の調べ
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が、少女はそれを全て拳で打ち払い、ヨハンに強烈なタックルを逆に見舞った。
「かっは!」
軽く10メートルは飛ばされた。
ヨハンは這いつくばってガングニールの装者を見上げた。
(強い…!)
理性がない分、攻め方はメチャクチャになると楽観視したのが浅はかだった。
(食い止めないと、いけない、のに)
あの凄まじい体当たりと、地面に叩きつけられたダメージで起き上がれない。吹き飛ばされた場所が彼女たちの死角の岩陰だったのがせめてもの救いか。
意思では体の機能に逆らえず、ヨハンは意識を失った。
…………
……
…
「――ハン、ヨハンっ」
眩しさに一度開けた目を眇めた。
「ヨハン! わたしが分かる?」
「しらべ……?」
体の節々が痛む。何故自分はこんな岩だらけの場所で寝ていたのか記憶を辿り――昨夜の自身がしでかした恐ろしく残酷な行為を思い出した。
軽い恐慌がヨハンを襲った。片手で頭を抱えて俯いた。
「痛いのっ? 帰ってマリアに診てもら……」
「触るな!」
調が肩を跳ねさせて手を止めた。
「僕は昨夜、一人の人間にあんな真似をした。僕はもう血に汚れた。だから触らないで。調まで汚れてしまうよ――」
――とんっ…
とても軽やかなタックル。顎のすぐ下に瑞々しい黒の頭。
「しら、べ?」
「マムが言った。優しさは捨てなさいって。でも、ヨハンがいたから。ヨハンが昨夜、ああした、から。わたしたち、いざとなったらヨハンが何でもできる、してくれるって、甘えてた」
「……何でもするに決まってる。調たちのためなら。キミたちがいたから僕は覚悟できたんだ」
「うん。だから、もういいよ。今度はわたしの番。ヨハンがわたしたちのために戦ってくれるなら、わたしはヨハンのために戦う」
ヨハンは感極まって、胸板に当たる調の頭を撫で回した。両手で撫で回した。
すると調は「んぷ」とヨハンの撫でくりを逃れ、膝で立ってヨハンの頭を抱いた。かなり慎ましい胸に顔を埋める態勢となる。
「心配してくれてありがとう」
「ほんとに心配した」
「ん。ありがとう」
調はヨハンの紺髪をわしゃわしゃした。照れている。
調の手をそっと取る。調はヨハンの頭を離す。
見つめ合った。
ヨハンは握った調の手の甲にキスを落とした。ぴく。調の体が小さく、本当に小さく跳ねた。
また見つめ合った。
ヨハンは調の頬に手を添えて顔を上向かせる。いつもは歳より幼く見える彼女が、今は自分よりずっと大人びていて。
顔を近づける。それに合わせるように調は瞼を下ろしていき――
「そこ! まで! デェェェェスッ!!!!」
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