2期/ヨハン編
K5 戦姫vs餓鬼
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QUEENS of MUSICで“フィーネ”として宣戦布告してから1週間が過ぎた。
必要な機器を調達し、拠点としての体裁を整えた旧浜崎病院の汚れた廊下を抜け、ヨハンは制御室を訪れた。
「マム。ネフィリムに“食事”を与えて来ました」
ヨハンがマムと呼んだ車椅子の婦人――米国では聖遺物研究の権威であるナスターシャに、ヨハンは淡々と報告した。
「ご苦労でした」
「いえ。こういう仕事はどんどん僕に回してください」
ヨハンは解像度がそう良くないモニターを見上げた。
飢えた肉食動物のように“食事”を貪る怪獣が映っている。
「これがネフィリムの暴走ですか?」
「いいえ。これは伝承にも描かれし、共食いすら厭わない飢餓衝動」
「幼生でこんなに暴れるなんて……」
「――やはりネフィリムとは、人の身に過ぎた…」
「人の身に過ぎた先史文明期の遺産、とか思わないでくださいよ」
ふり返る。制御室に入ってきたのはウェルだった。
「例えヒトの身に過ぎていても、英雄たる者の身の丈に合っていればそれでいいじゃないですか」
モニターやタッチパネルのパープルライトを上下から受けて、ウェルの笑顔には陰影が射している。
ヨハンはどうしてもウェルを信用しきれなかった。
ウェルは武装組織フィーネになくてはならない技術の持ち主だが、それを差し引いても、ヨハンの奥底の部分がこの男を拒否する。
黙って睨むヨハンに対し、ウェルはにこにこするばかり。
すると別棟に続くドアのスライド音がした。
「マム! さっきの警報は…!」
駆け込んだのはマリア、調、切歌の3人。ヨハンは何気なくふり返り、彼女たちの格好を見て危うく腰を抜かしかけた。
ガウンにキャミソールにホットパンツ。シャワー中だったのか3人とも髪は濡れ、毛先に水滴が溜まっては落ちていた。胸の谷間やら二の腕やらヘソやら、出していけないわけではないが大問題な部位があっさり露出している。
とんでもない、あられもない、けしからぬ格好である。
マリアたちは恥ずかしくないのか――ないのだろう。マリアも調も切歌も浮かべるのは険しさだけだ。
「心配してくれたのね。でも大丈夫。ネフィリムが少し暴れただけだから。隔壁を下ろして“食事”を与えているから、じきに治まるはず」
ナスターシャは気づいていないのか、気づいて言及していないのか。
(どちらにせよ、ここで僕がそれを言えばレディに恥を掻かせる。ここは、黙っているしかない)
ヨハンの、下らないがすごく大事な危惧を追い払うように、また部屋が大きく揺れた。ネフィリムが暴れる振動だ。
「マム」
「対応措置はすんでいるので大丈夫です」
厳しく問うマリアに対し
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