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K's−戦姫に添う3人の戦士−
1〜2期/啓編
K7 彼の許せない理由
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、その先輩のファンの女子が、何で先輩が死んで響ちゃんは生きてるんだ、みたいなことを言い出しやがった。あの頃世間じゃライブ生存者狩りが流行ってたからさ。響ちゃんも標的にされた」

 クソみてえな話だよな。響ちゃんが何かお前らに悪いことしたかよ。してねえだろ。殺すぞ――とか毎日殺気まき散らしてたからか、弟のおれへの被害は響ちゃんに比べて少なかったけど。

「響ちゃんは確かに死にかけて、頑張ってリハビリして、医者もビックリなくらい早く帰って来てくれたのに。それ実はケガしてないんじゃね、って言う奴ヒトとして終わってるし」

 家族みんなで響ちゃんのお帰りパーティーして、次の日からは同級生の質問攻めに遭った。あの落下感は多分世界のどのジェットコースターでも味わえない。

「それだけならまだいいんだけど」
「まだあるの?」
「あるよ〜。おれの親父がさ、もーマジで救いようのないダメ親でさ。響ちゃんのこと会社で言いふらしやがった。俺の娘はあのライブ会場から生きて帰ったんだぞー、って。ところがどっこい、世間は狭い。実は取引先の社長令嬢も、あのライブ会場で死んでたんだと」

 しゃべり続けでノド乾いた。いい具合に自販機あるし。冷たいもんでも買うか。

「そんなこと言っちまった親父だから、プロジェクト外されて酒浸り。お約束の転落コース。殴られた時もあったなあ。さすがにばーちゃんは歳だから頑張って庇ったんだけど」
「そのお父様は」
「出てった。後は知らね。追っかける気もねえし。どっかで野垂れ死んでりゃいいのに」
「そう……」
「同情した? ならもうちょい響ちゃんへの当たり、改善してほしいなー」

 お財布ケータイをタッチでポン。自販機に出てきた紙コップを持ってソファーに戻った。

「風鳴サンは風鳴サンで相方が死んで傷ついてるのは分かるよ。『それ』が向けられるのが響ちゃんじゃなけりゃ、おれも風鳴サンの味方だったかもだけど、響ちゃんだったから。どんな正当な理由があろうが、響ちゃんを傷つけるなら、おれは誰であっても許せない」

 紙コップを風鳴サンに突き出す。中身はホットコーヒー。
 風鳴サンはびっくりな顔でおれを見上げた。分かってんよ。ワイロにしちゃ安いのは。とにかくテーブルの上に紙コップを置いた。

「でも響ちゃんはおれみたいに根性悪くねえ。困ってる人見つけたら声かけるし、道聞かれたら自分で連れてくし、バスとかモノレールで真っ先に席譲るし。ノイズ退治もそういうのの延長でしかない。ずっと『お前だけ生き残った』って言われて、生き残っただけの何かをしなきゃいけないってずっと思ってる」

 この世に守る価値があるもんなんて一握り。今でもそれを毎日刻み付けられる。世界なんて滅べ。おれは立花家の人と未来ちゃんだけ元気で幸せなら他はどうでも
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