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第一章
剣闘士
今日もコロシアムで歓声が響き渡っていた。
「そうだ、やれ!」
「そこで突くんだ!」
「いいぞ!」
観客席から次々に声がかけられる。中央の闘技場では今大柄で白い肌を持つ男が猛獣と対峙していた。
金髪碧眼であり彫の深い顔をしている。そのことから彼がゲルマン人であることがわかる。
彼の名前はバーナムという。ローマで剣闘士をしている。今は斧を手に熊を相手にしていた。
その彼にローマの市民達が声援を送っている。簡素な鎧を身に包んだ彼に注目している。
「いいぞ、バーナム!」
「いつもみたいにやれ!」
「熊を倒すんだ!」
皇帝も列席し戦いを見守っている。その中で熊は四足になり唸っていた。
「グルルルルルルル・・・・・・」
目を怒らせ餓えた声をあげている。凶暴にさせる為にあえて餓えさせているのだ。
その熊が彼に襲い掛かって来た。だが彼はまだ動かない。
「!?大丈夫か?」
「やられる!?」
しかしそうはならなかった。彼は斧を上から下に一閃させた。それで突進して来た熊の額に斧を深く打ち込んでみせたのである。
「悪く思うなよ」
熊から身体をかわして呟くバーナムだった。
「さもないと俺がやられるからな」
「やった!今日もやったぞ!」
「バーナム、見事だ!」
「やっぱり御前は最高の剣闘士だ!」
市民達はこう言って彼を褒め称える。彼はその歓声に手を掲げて応える。しかしその表情はない。まるで鉛の様な表情である。
そして静かに控え室に戻る。その彼を仲間達が出迎える。
「御苦労さん」
「今日も一撃で終わらせたみたいだな」
「そうだ」
その仲間達に静かに応える。石の部屋の中に入りながらの言葉だった。
控え室はコロシアムの地下にある。灯りに照らされたその中に座った。そのうえで静かに鎧を脱ぎようやくくつろいだ顔になるのだった。
「今日も終わった」
「熊どうだったい?」
「やっぱり怖かったかい?」
「いや」
今の仲間達の問いには首を横に振るのだった。
「特にな」
「そうか、それもいつも通りだな」
「やっぱりあんたには熊も適わないか」
「流石今一番の剣闘士だな」
口々にこう言って彼を褒め称える。しかし彼の顔はそのままだった。
「今は、か」
「んっ、どうしたんだい?」
「また急に」
「そう言われた剣闘士は多いさ」
彼はその岩を思わせる顔で言うのだった。
「けれどな。そいつはすぐに死んでいったな」
「まあそうだよな」
「それはな」
仲間達は彼の今の言葉にありのまま応えた。
「だってな。それが俺達だからな」
「剣闘士だからな。どうしてもな」
「俺はなりたくてなった」
彼はまた言った。
ロー
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