1〜2期/啓編
K1 立花響の弟
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おれは啓。14歳、中学3年生。ちっと同世代の男子よりケンカ慣れしてるのを除けば、どこにでもいるフツーの中坊。
放課後。そんなおれが自転車を漕いで向かうのは、男子には禁断の花園であるリディアン音楽院だ。
リディアンにはおれの姉が通ってる。チャリ漕いでまで実家からはちょーっと遠いリディアンの学生寮に向かってんのは、別にシスコンだからとかじゃねえからな。
チャリの後部座席にはゴムのベルトで止めたクーラーボックス。中身は母さんが作った姉への差し入れ冷凍食品。
寮は食事つきだけど、ほら、実家の味が恋しくなったり、急に夜食食いたくなったりするじゃん? それのため。
ちなみにおれが届ける理由だが、母さんが送料をケチったわけじゃない。
……うん。訂正。シスコンじゃないけど、おれが姉ちゃんに会いたいから、おれからチャリンコ便を申し出たのだ。
お。噂をすれば。
「おーい、響ちゃーん!」
歩道を走ってる我が姉、発見である。
「はっ、はっ……啓? どしたの。家の方向と逆じゃん」
産まれたてのひよこみたいな毛色の、目が大きな女の子。この人がおれの姉、立花響である。
「母さんから響ちゃんに差し入れ持ってくとこだった。これこれ」
「本当!? やったー! 実は夜中にお腹空いちゃう時とかあって苦労しててさあ。変に料理して音で未来起こしちゃうわけにはいかないし」
中学時代から変わらず、小日向未来ちゃんとは仲がいいらしい。安心だ。帰ったら母さんに報告しとこ。
「響ちゃんは何してんだ?」
自転車を下りておれたちは並んで歩き始める。ちょっと得した。
「あ! 今日ね、翼さんの初回特典付きCD買いに行ってたとこなんだあ」
「ふーん。あ、じゃあ後ろ乗る? 連れてってあげるよ」
「え、でもクーラー……」
「肩に担ぐ。筋トレ代わりだ」
ちなみにおれはバスケ部だ。響ちゃんと背が同じくらいだから、人より鍛えないとレギュラーに返り咲くのは難しい。まあ、そんなんなくても難しいんだけど。
クーラーボックスを外して、ベルトを肩にかけて脇に提げた。
「ほら」
「じゃあお言葉に甘えて」
ざあっ
音が消えた? それに風に混じってるけど、これ、炭のにおい……
自転車を止めて目の前の角を曲がった。
炭。炭。炭だらけだ。
――ノイズ。
「いやーっ!」
子供の悲鳴。
ちょっと待て――って言う暇もなし。響ちゃんは走り出した。
響ちゃん一人を危険地帯に放り出せない。
〜〜っ母さんごめん! 今日は差し入れ無理そうだ!
案の定、駆けつけた先には、小さい女の子と大量のノイズ。
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