1〜2期/啓編
K1 立花響の弟
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――ここでおれが及び腰なんざ、男が廃る。
響ちゃんを肩に担ぎ、女の子を片腕に抱えて、走り出した。
「啓!?」
「文句も苦情も後回し!」
女子二人分の重さを担いで走るなんて、ウサイン・ボルトでも多分できっこねえ。でもそれくらいやってのけにゃあ――立花響の弟の名が泣くってもんだ。
「シェルターどっち!? おれ、この辺の土地勘ない!」
「あっち!」
「オーライ!」
「「きゃーっ!」」
腕振りなしの全力疾走。いつ足が攣ってもおかしくない。でもスピードは緩めねえ。
この場を生き抜けるなら、正確には、響ちゃんが生き延びられるなら、足も肺もくれてやる。
だってのに、ノイズは行く先々に現れた。
何度も方向転換を強いられて、気づけばシェルターから離れるコースを走っていた。
ああ、くそ。いかにもな工場地帯に入っちまったじゃねえか。これ、救助に来る人とか絶対間に合わねえパターンだわ――とか考えてたら嘘ぉ! 行き止まり!?
「しんじゃうの…っ?」
――響ちゃんと女の子を下ろして、前に出て、両手を広げた。
目の前にはさっきより増えたノイズ。
死なせて堪るか。
死んで堪るか。
おれはまだ自分の気持ち、響ちゃんに伝えてないんだ!
「生きるのを諦めないで!」
――金色が光った。
「 ――Balwisyall nescell Gungnir tron―― 」
思わずふり返る。この金の光、源は……響ちゃんの胸!? ま、眩しくて、目が開けてらんねえ……何だってんだ!
女の子がおれにしがみついたから、とりあえず腕を回して庇う態勢。
光が治まっていく。
そこにはおれの知らない響ちゃんがいた。
「響ちゃん……そのカッコ……」
オレンジと黒がベースの、なんかラノベのバトルヒロインが着てるみたいなアーマードスーツ。
「え、うえ!? わたし、どうなっちゃってるの!?」
「おねえちゃん、かっこいーっ」
いや少女よ。カッコイイのは認めるがこの事態に何かしら……ツッコまねえよなあこの歳じゃ。
訳分かんねえでいる人間様の都合はお構いなし。ノイズが固体から液体に変わって襲ってくる。
「響ちゃん!!」
響ちゃんは目を閉じて思いっきり腕を振って、ノイズを――殴った。
おい、嘘だろ。ノイズが……炭になった? え? ノイズに触って炭にされるのって人間のほうだよな。何がどうなって。響ちゃんが着てるあのスーツのせいか?
ブォォォォン!
バイクの音がしたかと思ったら、目の前でノイズがどんどん撥ねられてく。
その運転手は凄まじい勢いで響ちゃんとすれ違って……ん? 影?
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