2期/ヨハン編
K prologueU もう一人の家族
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いやあ、麗しい友情だ」
切歌とマリアがあからさまに、調は無表情なまま、不快を浮かべた。
入ってきたのはウェル博士だった。
適性の低い人間と聖遺物を無理に適合させる薬物、LiNKERの開発担当者。
ウェルは胡散臭いオーラを隠そうともせず、調と切歌の後ろに回り、ご高説を披露する。聞くまいと、ヨハンは聴覚をなるべく鈍らせていた。
「この力を以てすれば英雄として世界を……」
ウェルの両手が切歌の肩、調の頭を撫でるに至って、ヨハンは動いた。
ヨハンはウェルの両手首を掴み、捻り上げて少女たちから離した。ウェルは手首の痛みからか人面にしては面白い形相をした。いい気味だ。
ぱっとウェルの手を離した。
空いた両手で調と切歌の細い肩を抱き寄せる。ウェルと異なり、彼女たちは嫌がらないでヨハンの胴に身を寄せた。それに内心ほっとする。
「手荒い歓迎ですねえ。彼女たちを装者に仕立てて再会を段取ってあげたのは僕ですよ?」
彼女らの担当はマリア同様ナスターシャだが、シンフォギアのメンテナンスとアフターケアはこの男の領分だ。ドクター・ウェルがその分野で一番だと“施設”の“大人たち”は口を揃えて言う。
つまりウェルに逆らえば調と切歌の体を弄られかねないということだ。
「……失礼しました。以後慎みます」
我が身の無力を痛感してなお、ヨハンは眉一つ動かさず謝罪を述べた。
相も変わらずのヨハンとウェルのやりとりを、マリアは険しい表情のまま、内心ではハラハラしながら見守っていた。
ヨハン・K・オスティナ。
マリアにとっては幼なじみのような関係と言うべきか。
紺髪に紺青の虹彩と、メディカルグリーンの室内着と、寒色尽くしの平均的な容姿。マリアと同じコーカソイドだが、マリアたちのような者に国籍や出自などさして重要ではない。
マリアもヨハンも皆、この「施設」にいる子どもたちは“レセプターチルドレン”。先史文明の巫女“フィーネ”の末裔にして、転生者の見なし子なのだから。
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