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BloodTeaHOUSE
眼鏡と鬼
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ないの?」
「ふふん。聞いて驚け。オレサマは鬼だ」
「鬼?」

どうだ、驚いたか!と言わんばかりに胸を張ってるけど、
カエンには角もないし、姿も私とそう変わらないのに、鬼?

「いいか?よおく聞けよ?コホン、あ、あー。
 ‥‥昔々あるところに、火焔童子というとても強い鬼がいました。火焔童子は酒池肉林の
 毎日を送っていましたが、ある日彼を倒そうと一人の男がやってきたのです。
 しかし火焔童子はとても強かったので、男には倒す事が出来ず、やむなく
 術で封印することにしました。しかし男の術力では完全には封印できず、己の命と共に
 封印することでなんとか中途半端に封印しましたとさ。それがオレサマと姿月だ」

昔話風に語られたふたりの話は少し悲しい物語に思えた。
自由を奪われた鬼と封印の楔になった人。相容れない存在なのに共にいなければならない。
 ―――――世界で一番相容れない人と永遠に一緒―――――……

「…………なんだかツライ話だね」
うつむいてそうつぶやくと、ポロっと涙がこぼれた。

「カエン、彼女は感受性が強いから、そういう楽しくない話題はいただけないね」
くしゃくしゃと私の頭を撫でながら飛白はそう言ってくれた。

「ご、ごめんなさい!わたしなんかが、関係ないのに……泣いちゃって…」
あわてて謝って涙をふくけど、真っ白い姿月の髪の毛が長い年月を思わせて、
大切な人たちとの別れを哀しんだんじゃないかと思うと、なかなか止まってくれない。

「いいんですよ、香澄さんはやさしい子ですね」
姿月はやさしく笑う。ほんとにいい人だ。

そのやさしい顔が切なくて、また涙がこぼれる。
やだなぁ、ここに来るようになってから、私は泣き虫になっていくばかりだ。

「それにしたって久しぶりだな!カエン」
「もーちょい店に顔出したってーや、姿月」

私の涙が吹き飛ぶような、明るい声で裏子が話す。カエンが裏子料理のファンだからか、
裏子はすごくうれしそうで、そんな裏子を見てると、こっちまで元気が出てくる。

「そうですねぇ、今月は忙しいようですし、実入りもそれなりに良さそうなので、
 夕餉が遅くなりそうな時は、通わせてもらうことにしましょうか」

んごーと裏子がその言葉に「やったー!」と喜ぶ。
普段お客様少ないもんねぇ、このお店。しかも裏子の料理のファンは貴重だし。
2人を見てると可笑しくて、くすくす笑ってるうちに、涙は止んでくれた。

「姿月、どんなお仕事してるのか、聞いてもいい?」

今月は忙しい、ということは忙しくない時もあるのかな?

「いいですよ。 私たちは退魔、調伏という仕事をしているので、依頼を得て、
 それが成功すると報酬が貰える。簡単にいうと拝み屋のようなものなんで
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