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BloodTeaHOUSE
君がいる夏
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を全部使ったから、りんご飴もわたあめも買えなかったし、
金魚すくいもヨーヨー釣りもできなかったけど、たくさん買ってよかった。

「はいどうぞ」

飛白の声に振り返ると、差し出されたのは棒つきのべっこうあめ。
飾り気も何もないけど、それがいかにもお祭りって感じがする。

「ありがとう……」

…甘い。なんだか懐かしい味がする。

「こういうのは雰囲気が大切だからね」

飛白のこういうところ、キザだと思うけど、悔しいけど似合ってる。

裏子とんごーに残ってる普通の花火を渡して、
多めに買っておいた一番好きな線香花火に火をつける。

火をつけると、小さいけどぱあっとまぁるく火花が散って、
それがだんだんパチパチと火花が散り始めて紫陽花みたいに光る。
しばらくすると、それがだんだん小さくなって密やかになって、
最後はポトンと火の玉が落ちるか、火が小さくなって消える。

色が変わったり大きな火花が出たりする派手さはないけど、
とっても小さな、何種類もの打ち上げ花火を見てる気持ちになる。

その小ささが、はかなげでかわいいから、大好き。

花火をぶんぶん振り回して走り回る裏子とんごーを放っておいて、
手を動かさないように、じっとして、ちいさな変化を眺める。

「この花火はひとつでいろんな姿になるんだね」

隣に座ってみていた飛白がそんな感想をいう。

「うん、それが好きなの。線香花火っていうんだよ」

シュウっと小さくなって消えたから、新しいのに火をつける。
飛白も火をつけて、二人並んで花火を眺める。

「丸く火花が散るのは、打ち上げ花火に似てるね」
「うん、かわいいでしょ?」

今度はポトンと火薬が落ちて消えた。

「あーしっぱい」
「失敗?」

また二人で火をつけて眺める。

「うん、消えるまで落とさないようにがんばるの」
「おもしろい楽しみ方だね」
「あとはね、どのくらい短くなるまで、花火ががんばるかも楽しみだよ」
「なるほど」
「火が消えたあとに長さを比べっこするの」
「へえ」

今度は最後まで落とさなかったので、長さを比べる。わたしのほうが少し短い。

「わたしの勝ち」

にっこり笑って自慢する。

「なるほど、おもしろいね」

飛白も笑う。

「でしょ?」

また火をつけて眺める。今度は飛白の勝ちだった。

「僕の勝ち」
「ふふっ、負けちゃった」

火をつけてちらっと飛白を見たら、
じっと線香花火を見つめてる。実は飛白ってすごく負けず嫌いなのかも。
って思ったらおかしくて、つい笑ってしまった。

そしたら手が揺れて 火薬が 足に落ちた。

「!!」

熱いっていうか痛い!ギュッと目をつむったら、
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