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BloodTeaHOUSE
記念日
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くすっと飛白が笑う。どうやらカマをかけたのに引っかかったらしい。

「うるさいっ!部屋片付けてくる!」

ぷいっとそっぽ向いて、2階へ行ってしまった。

「裏子ちゃんに任せておいて大丈夫かい?」

裏子はよく働くが性格が大雑把なせいで、細かいところに気がつかない。
任せておけば、”とりあえず寝られる部屋”になってしまうは間違いないだろう。

「かとゆうて、ここにお前だけ置いてくわけにもいかんやろ」
「まあ、そうだね」

飛白とて、さすがに店の中でどうこうするつもりはないが、裏子が許さないだろう。

「……ゃだ……死んじゃ……ゃ…」
小さなつぶやきとともに閉じた目から涙が一粒こぼれる。
「香澄ちゃん?」
「……ぉとぉさ……ぉか…さ……ゅ…ゃ……」
呼びかけても目を覚まさないところをみると、寝言らしい。


「寝言かいな?」
「みたいだね」
「そんなにショックやったんかなー」
「それだけじゃないと思うよ」

黒い髪に指を絡めながら飛白は言う。

「どういうことや?」

んごーは眉を寄せる。
毛は生えてないけど、わざわざそこだけ色を変えて表情をわかりやすくしているのだ。

「この前、裏子ちゃんが死んだことがあるって言ったことがあったよね」
「あぁ、あんときも嬢ちゃんえらい泣いて難儀したなぁ」

目を細めてんごーは思い出す。何の予兆もなくボロボロ泣き出したから随分驚いた。

「それに今、両親のこと呼んでたしね」

人の死や別れに敏感で……
彼女が初めて店に来た日、喪服のように真っ黒なワンピースを着てたっけ。

「ただの夢やったらええな」
「そう、だね」

ただ夢ならいい、そう願いながら、長い髪を梳く。


「おーい、一応片付けたぞー」

裏子が顔を出したので、抱き抱えて部屋へ連れて行く。
手にはエプロンが握られたままなので、めくれ上がって不格好だがこの際仕方がない。
部屋に入ると、案の定”とりあえず寝られるようにした”といったふうで、
ベッドのシーツやカバーは変えてあるが、掃除機のかけかたはいい加減だ。
四角い部屋を丸く掃除したといえばわかりやすいだろうか。まさに”一応片付けた”だ。

「一晩だけならこれでも仕方ないか」

そう言って、香澄をベッドに寝かせ上掛けをかけてやる。
制服のエプロンを外し、枕元に置く。


夢を見た。

夢の中の私は妹と一緒にお昼寝していた。
お昼寝から覚め、いつもなら自分より先に起きてグズる妹がやけに静かで、
抱き上げたら息をしてない。おかあさんおかあさんと喉が潰れるかと思うくらい叫んだ。
場面がかわった。機械だらけの部屋にベッドがひとつ。
ガリガリに痩せて、あちこちをチューブで繋がれたお父さん
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