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契約書
1部分:第一章
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長であるジャンヌをはじめとして多くの尼僧達も愛人にしたのだ。
 その彼女達は彼との関係に溺れながらも神への罪の意識を持っていたらしい。ここに彼の敵達が目をつけたのである。
 とにかく敵の多い彼だった。すぐに密談が行われた。
「妻をたぶらかされた」
「娘を身篭らさせられた」
「従姉妹を愛人にされた」
「攻撃の文章を書かれた」
「信者を奪われた」
 とにかくそうした人物がごまんと集まった。その彼等が一斉に密談をはじめたのだ。
「あのシスター達を使うべきだ」
「ウルスラ会のか」
「あの修道院のか」
「そうだ、あそこだ」
 これまでは互いにいがみ合っていた地元の政治家達も各宗派の者達も今はグランディエ一人を陥れる為に一致団結していた。その彼等が企んでいたのである。
「あいつはあの修道院にも出入りしているな」
「そうだな。あそこの修道院長は美人だ」
「確かにな」 
 ジャンヌは美貌の修道院長として知られていた。その法衣を脱ぐとブロンドの短く切られた髪とつぶらな瞳が現われる。その美貌が彼に目をつけられたのである。
「彼女は確かにあいつと関係を持っている。そして」
「そしてだな」
「他のシスター達とも」
「あの修道院にもだ」
 一人が忌々しげに言った。
「あいつのハーレムになっている」
「忌々しい奴だ」
「しかしだ」
 ここでまた言われるのであった。
「彼女達は今罪の意識に苛まれている」
「罪か」
「姦淫の罪だな」
「それを使うのだ」
 こう話されるのだった。
「その罪を清める為に」
「その為に」
「何をせよというのだ?」
「悪魔の名を叫ぶ」
 それだというのである。
「悪魔にたぶらかされてだ」
「そして道を誤った」
「そしてその悪魔とは」
「あいつだ」
 既に答えは出ていた。これしかなかった。

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