一話:こんな日常
[1/3]
[1]次 最後 [2]次話
耳から不愉快な音が響いてくる。俺―――リヒター・ノーマンは寝ぼけ眼で音の出どころである端末を探し出し勢いよく手を振り下ろしてクラッシュ! ……することはさすがにせずに普通にアラームを止める。
以前はよく端末ごと粉砕して母と父に怒られたが今となっては良い思い出だ。
朝というものが嫌いな俺はアラームを止めた後も布団にくるまり籠城を決め込む。
だが、いつまでもこうしていれば高校に遅れてしまうのは免れない為に起きなければならない。
脳内における激戦の末に何とか布団の魔力から逃れた俺はベランダに出て太陽の光を浴びる。
「あー……眠い。朝なんて消えてしまえばいいのにって……ん?」
ベランダに何か引っかかってる。
そうとしか言えない光景が俺の目の前にあった。
体をくの字に曲げてベランダに器用にひっかかっているのは見慣れた黒いジャージにいつもどこにしまってるんだとツッコんでしまう長く黒いツインテール。
ここまで見て誰かを理解した俺は今度からベランダに油でも塗っておこうと決意する。
そんなところでひっかかっていた物体は顔を上げて笑顔を浮かべる。
「お腹減った。お腹いっぱいご飯を食べさせてくれるとうれしいーわ」
その台詞に対して勿論俺は―――
「ごめん。うちには夏の暑さでだめになっているであろう焼きそばパンも傷んだ野菜もないんだ―――とでも言うと思ったか、ジーク!」
容赦なくジーク―――ジークリンデ・エレミヤの肩を押してベランダから突き落とそうと努力を始める。
すると、何故かジークは体をくの字に曲げたままわたわたと暴れはじめる。
「ちょっ! お願いやから押さんといてリヒター! 落ちるから、落ちるから!」
「フリか? フリだな。よし、任せとけ」
「フリじゃないって、ほんまに落ちる!」
「落ちても魔法があるから大丈夫だろ。だから早く落ちろ」
「普通はそっち側に引き上げてくれるんやないの!?」
ちょっと何を言ってるのか分からない。そもそも普通の人間はベランダに引っかかったりしないはずだ。
取りあえずこのままだと布団が干せないからジークをどけることには変わりがないな。
まあ、今日は布団を干す予定はないけど。
「取りあえず中に入れてくれへん。私ほんまにお腹ペコペコなんよ」
「黙れ、乞食!」
「う、事実やから否定できへん」
ジークは以前に行き倒れているところを拾ったのが出会いだ。
面倒なことに自宅のアパートの前で倒れていたので俺は面倒事にならないように他の所に捨てようと考えた。
そして燃えるゴミか燃えないゴミどちらに捨てるべきか悩んでいる時に起きたので仕方なく飯をあげたわけだ。すると、あら不思議。立派な乞食の完成だ。
気分としては捨
[1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ