木曾ノ章
その9
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ラナイ」
「俺もお前が旅路の同行人がいいなと思っちまったのさ。俺が死ぬまで待っとけ。まぁ、俺が殺さなくても俺の仲間はお前を殺すかもしれんが。その時は頑張って俺を殺すといい」
言いながら、姫の武装を外していく。姫は抵抗せず、ただ私に手を握られたままだった。私に負けたゆえなのか、他に理由があるかはわからない。暫くすれば、姫はただの人のような身なりとなった。
私は姫の手を握りながら、遠く、満月を見上げた。直ぐ側で湧く砲撃音も、今は遠く聞こえる。右手で掴んだ姫の手は酷く冷たかった。深海棲鬼、嘗ての艦娘。何故、彼女はただの深海棲鬼に成らずに姫となったのか。そうだ、それを聞こう。
「なぁ、お前は何で姫になったんだ?」
「……ソレハ死ンデカラ語ロウゾ。黄泉路ノ楽シミニシテオケ。ダガ、ソウダナ。今ハ代ワリニ何ヲ語ロウカ。聞イテクレルカ?」
右手で姫の手を強く握りながら、私は彼女に言葉を返した。
「ああ。聞くさ」
互いが死んだ後も、ずっと。
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