第20話
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明朝、広宗後方に位置している黄巾賊達の兵糧庫、その『付近が』炎に包まれていた。
日も上がりきっていない時間帯の出来事に、黄巾賊達は慌てて消火活動に勤しんでいた。
そして警備が薄くなった城門、そこに残っていた十数人の警備は音も無く倒され門は開かれた。
「か、官軍だああぁぁ!! 官軍が門から押し寄せてくるぞおおお!!」
「うわぁ……あの人すごいですね思春さん!!」
「袁将軍……呂布か」
遠目で様子を見た二人の口から感慨の言葉が漏れる。自分達とは次元の違う武力に数瞬魅せられていたが――
「行くぞ明命……張角だ」
「は、はい!」
己達の役目を再認識し行動を開始した。万が一にも他に遅れを取るわけにはいかない……
(……明命)
(……はい)
広大な広宗の裏道を、張角に向かって疾走していた彼女達は互いに目を見やり確認した。
(つけられていますね……黄巾でしょうか?)
(元農民や賊ごときが私達について来れるとは思えん、他諸侯の手の者だろう)
走りながらチラリと後方にいる人物に目を向ける。蝶を模した珍妙な仮面をつけているが、ここまで自分達について来れるあたり只者ではない。
(追い払いますか?)
(……必要ない)
相当の手練れ、それでも自分達二人ならば対処できるはずだ。
だが今回は失敗が許されない。武力行使以上の確実な策が必要だった。
(この先二手に分かれるぞ、奴がついて来たら――)
(適当な道を行き時間を稼ぎ、残った一人が先に張角を――ですね!)
即座に意を解する相方に、甘寧は珍しく頬を緩めた。
二手に分かれることで少し遠回りになるが止むを得ない。自分達と同等か、それ以上の武人を引き連れるわけにはいかないのだから――
(ここだ! 私は右、明命は左を頼む)
(はい!)
そして阿吽の呼吸で分かれ――彼女達の後に続いていた華蝶仮面は立ち止まった。
「おや、気配は消していたはずでしたが……本業には適いませんなぁ」
突然事態にも関わらず。華蝶仮面、もとい星には慌てた様子が感じられない。
追って来た者をかく乱するための手段を即座に編み出してみせた甘寧、彼女の意思を理解し対応してみせた周泰。
非の打ち所の無い完璧な動きのようであったが、ある事が盲点となっていた。
「このまま前に進んだ方が近いと言うのに、ご苦労なことですなぁ……フフッ」
彼女達のとった手段には、相手が予め張角の場所を知っていることは、想定されていなかった――
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