第20話
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るとは思いません』そう言えば良いだけだ。あらかじめ『情報収集』が目的とも言ってある。後は素知らぬ顔で当初の予定通り城門を開けさせ、言及があれば偶々うまくいったと報告するだけだ。
報酬は残念だが背に腹は変えられない。この程度の金品では張角の首に見合う名声は得られないのだから――
「成否は問わぬ、受けるだけでも報酬をやろう」
(――っ!?)
「な、なんと」
しまった! 想定外の言葉に周瑜は、自分の用意していた逃げ道が音を立てながら崩れていく感覚に陥った。
提示された報酬は孫呉にとって喉から手が出るほど欲しい物品である。今回は張角の首に軍配が上がっていたから断る言葉が用意できたのだ。
しかし成否を問わないのでは話しが違ってくる。報酬を、そして頼みを断る理由が存在しない。
では報酬だけ受け取ってとしまえばどうか――さらにまずいことになるだろう。
刻限を伝えず、当初の予定通り張角の首を上げたとする。情報伝達が難しく正確な刻限がわからなかったと惚けて見せる。――それでも袁紹は報酬を渡すだろう。言葉の通りに
そして諸侯は疑問に思うのだ。孫呉は袁家から何故大量の物資を貰っているのかと、疑問に思った諸侯は袁紹に質問する。彼はそれに答えるだろう。そして諸侯は思う、城門を開けられる手段を持ち報酬を受け取りながら、袁紹の頼みを反故にして報酬だけ受け取る恥知らず――と、勿論そうならないかもしれない。しかしなる可能性もあった。
そうなれば孫呉の評判は地に落ちる。独立を成しえても諸侯から孤立してしまうだろう。
「……城門を開いた後我々は?」
「好きに動くと良い」
「……」
彼が提示したのは城門の開く刻限だけ、落とし所があからさまに用意されているようで嫌悪感を感じるが、首を縦に振る他無かった。
袁紹に会う前は彼を手玉に取ることを夢想し。その感覚に酔いしれていた。
まさかここまで後手に回されるとは――
「っ!?」
その時、袁紹の後ろに控えている娘と目が合った。真っ直ぐに周瑜を見据え視線で語りかけてくる。
――もう逃げ道は存在しませんよ?
そして周瑜は悟った。これは彼女が用意した包囲網だ。袁紹という名族を使い、自分達に圧力を掛けることで選択肢を狭め、わずかに残っていた逃げ道を財力で封じた。
――化け物め、周瑜は目の前の小さな娘に内心悪態をつく、恐らくあの鎌掛けから彼女の策略だったのだろう。
文官、とりわけ軍師という名の生き物には拭い難い癖が存在する。『最悪の想定』だ。
軍を動かす上で色んな状況の変化が存在し、それを予め想定していれば有利に動けるため、有能であればあるほど最悪の事態を想定、対処を考えておくものだ。
周瑜は袁紹の言葉か
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