第20話
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「……」
周瑜は想定すらしていなかった最悪の可能性、『潜入している二人の存在の露見』が出来た事に冷や汗を流していた。
想定していなくて当然だ。彼女達の任は孫呉陣営においても秘中の秘、武将としての存在は知られていても広宗に潜入していると知る者など存在して良い訳が無い。
しかし先ほどの袁紹の言動――城門が開く時を知りたいと言った後に、自分達孫呉陣営が開けると『知っている』かのような言。
おそらくは鎌掛けであろう。しかし周瑜には――否、自分達には彼が知っていると仮定して動かなければいけない理由があった。
袁家と孫家では天と地ほどの差が存在する。そんな彼等に虚位を報告したとして心象を悪くするわけにはいかない。第一城門は開かせる手筈なのだ。此処で二人の存在をとぼけても後で露見するだろう。
「――はい、甘寧と周泰の両名は『情報収集』のため、広宗内部に潜入させております」
(め、冥琳!?)
(……)
吐き出すように呟いた親友の言葉に孫策は目を見開く、手柄を立てるためにも二人の存在を秘匿にするように、と語った本人がその存在を暴露したのだ。黄蓋には何となく肌で感じていたが、単純明快な孫策は混乱していた。
「フム、貴重な秘を大局のために晒すこと、まこと大儀である」
「――ハッ」
どの口で言っている!――恭しく頭を下げながら胸の中で叫び、歯軋りをした。
袁家のような強大な勢力など敵にまわせない。最悪彼等と懇意にしている諸侯も敵になるであろう。
彼女にとって先ほどの言葉は『言わされた』ような物だ。そこに自分達の意思など存在しない。
そんな彼女の胸中を知ってか知らずか、袁紹は上機嫌で目録を差し出した。
「……これは?」
「言い忘れていたが命令では無い『頼み』だ。報酬があるべきであろう?」
「ちょ、ちょっとこれ!?」
先に目を通し声を上げた孫策につられ、のこった二人も確認する。
目録には自分達孫呉の陣営を数年は賄えるほどの、物資や資金が記載されていた。
(荷馬車の数が多かったのはこれか……)
袁紹の天幕に向かう途中、彼女達には無駄に多い荷馬車が目に入っていた。
まさか予備の兵糧ではなく財の類だとは――
莫大な報酬に目を白黒させる孫策と黄蓋、しかし周瑜は――
(……良し!)
表情には出さないものの内心口角が上がる思いだった。この状況は彼女の『想定内』だからだ。
財力に余裕がある袁家ならそれを使ってでも要求してくる。しかし周瑜にとってこの状況こそが待ち望んでいたものであった。
城門が開く刻限を教えて欲しい――という要求に対して報酬が過剰すぎる。
これであれば逆に断りやすい。『この報酬に見合う働きが出来
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