第20話
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愚鈍などではない。自分の『勘』がそう強く告げている。
名族の気に隠れて武の匂いを感じる。文武両道の言葉に偽りはないようだ。孫家の今後を担う 長女でありながら武人でもある孫策は、見え隠れするような袁紹の武の香りに惹かれ――
(顔も良いし真面目に嫁入りを考えるのも悪くないわね。袁家が後ろ盾なら心強いし)
幸いにも自分達三姉妹は異なる魅力を持っている。後は彼の好み次第か――と、好感を抱き早くも好みの女性を検討し始めていた。
(……)
周瑜が抱いたのは警戒心、先ほどの言動や表情からは自信の強さが感じられた。
自尊心の高い者には傲慢、並の者には慢心に映るであろう気位の高さに隠れ、その瞳からは知性の光を感じさせる。後ろに控えている娘も只者では無さそうだ。
(探りを入れるにしても慎重にいかねばなるまい。もっとも、聞き出せるとは思えないが……)
どうにかして袁紹の目的を知りたかった彼女は、その難易度の高さに癖で頭を抱えそうになり、 かわりに腕を組んだ。それにより胸が強調され袁紹の背後から恐ろしい殺気が漏れていた――
(……むぅ)
黄蓋が抱いたのは畏怖、先の二人に比べ老獪な彼女は袁紹の器に着目していた。
三公を輩出した名門袁家の現当主、彼が着任してから南皮は急速な成長を遂げており、只者ではないと常々思っていたが――
(何と大きな器を感じさせるのだ。気を抜けば跪いてしまいそうじゃ……)
彼女が敬愛する主、孫堅にも勝るとも劣らない覇気、決して慢心などではない実力に裏づけされた自信溢れる立ち振る舞い。なるほど――この強烈な光に魅せられ人が集まるのだろう。
これでまだ若いと言うのだから堪らない。伸び代を残している彼はどこに行きつくのだろうか――顔に笑顔を貼り付けているが、黄蓋は背中に冷たい汗を感じていた。
三者三様の胸中だったが、袁紹に一目置いたのは同様だった。
――そんな彼女等の様子に袁紹は一先ず安心する。普段であれば名族の自分に緊張しないよう気を配るのだが、今回はあえて場に緊張感を作る。これから『頼み』を聞かせるためにも、 彼女達と必要以上に友好的になってはいけないと口をすっぱくして言われていた。
「さて、挨拶したばかりで悪いが『頼み』があってな」
――来た! 袁紹の言葉に孫呉の三人――特に周瑜が構える、袁紹の要求がどのようなものであれ自分達に不利益に動く可能性が高いとして、孫策等とも話し合った結果、断るのが一番という結論になっていた。
(どのような要求であれ避わしてみせる!)
すでに周瑜の頭の中には、どのような要求も避けられる言葉が用意されていた。
例え補佐を命じられても、例え――討ち取った張角の首を差し出せと命じれても。
後は袁紹の
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