3部分:第三章
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げて答えた。その目は涙に濡れている。
「この唐の」
「そうだ。地を統べる唐のだ」
中国の王朝は世界の統治者であると考えられていた。このことが彼の誇りだったのだ。コンプレックスと裏返しであるだけに複雑である。
「皇帝であるな」
「その通りです」
「その誇りにかけて嘘は言わぬ」
誇りを柱にしたのであった。
「断じてな。だからこそ」
「私を護って下さるのですか」
「どうして昭儀を見捨てることがあろう」
またしても言ってしまった。言葉は心に刻み込まれる。
「その朕が」
「それでは陛下」
「うむ」
昭儀を完全に信頼して頷くのだった。
「朕がついておる。何も心配することはない」
「有り難き御言葉」
「誰が何と言おうとだ」
これで二人の重臣の運命は決まってしまったと言えた。そして二人が擁護する二人の后の命運もまた。
「朕がおる。安心せよ」
「はい・・・・・・」
高宗はこの時気付いてはいなかった。昭儀の目は確かに涙を流してはいたが目は赤くはなっていなかった。そして顔も崩れてはいなかった。それどころか口元には最後にじっとする笑みさえ浮かんでいたことに。彼は全く気付いていなかったのであった。
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