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武后の罠
1部分:第一章
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代のこの国の宮廷でも同じであったが。
「皇后様はあの部屋に来られることになっていたな」
「その通りじゃ」
 これもまたよく知られていた事実だった。
「既に話がついていた」
「そして行かれたのじゃ」
「ではやはり」
 話は動く。天秤そのままに。
「皇后様が」
「そういえば皇后様はあの部屋に行かれたことを確かに申し上げておられたな」
「そう、その通りじゃ」
 この話にはすぐに相槌が入れられた。
「前々から昭儀様のお部屋に行かれるという通達もあったぞ」
「それは宮中の皆が聞いておったことじゃ」
「ではやはり」
 またしても疑惑は皇后に向けられた。
「皇后様が昭儀様の御子様を」
「陛下の娘様を」
「いや、待て」
 だがここで話は一旦止められたのだった。
「迂闊なことは言わぬ方がよいぞ」
「むっ」
「やはりか」
「そう、やはりじゃ」
 言葉がさらに小さくなりひそひそとしたものになる。語る者達もまたほぼ無意識のうちに首を縮めていた。まるで打ち首から逃れようとしているかのように。
「今はわからぬな」
「そうじゃな。それはな」
「わからぬ」
 そういうことになるのだった。
「これ以上この話は止めよう」
「わかった」

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