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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
51.獰猛なる化物
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きたのはただの抵抗だった。
それでもせめて、彼だけは逃さなければいけない。無関係の人間というわけではないが、それでも彼はこの祭典に巻き込まれただけなんだ。
どうにかして逃さなければ……
最後の力を振り絞るように友妃は腕に力を込めて体を起こそうとする。しかし体が言うことを聞くことはなかった。
背中がやられてしまっているせいで腕が動かない。
もうダメだ、と諦めかけた時、友妃の耳は微かな音を捉えた。
「……
遠矢
(
とうや
)
の
病
(
やまい
)
を断ちて破滅せし未来を救い給え」
それは祝詞だった。なんの感情もこもっていないただ言葉を並べているだけのような祝詞。
すると背中にじんわりと温かい感触が広がった。それはみるみるうちに友妃の背中から熱さを奪っていく。
体が軽くなった気がした。今一度、腕に力を込めてみる。
ぎこちなくはあるがしっかりと体は動く。上半身を起こして彼を探す。
「え……?」
そんな声が口からは漏れた。
なんで?
どうしてあなたがそれを?
頭の中にはそんな疑問がグルグル回る。
友妃の視界に映ったのは、髪を風で揺らし、かなりボロボロになった制服で赤髪の
吸血鬼
(
オリスブラッド
)
と睨みつけている先ほどの少年。その手には、獅子王機関の兵器、“
無式断裂降魔剣
(
ディ・イルズィオーン
)
”が握られていた。
まさか、そんなことがあるわけがない。
友妃は何度も否定する。あの武器は友妃以外の人間が使用することはできないと師匠である縁堂縁が言っていた。確かにただの武器として使用することなら誰でも可能だ。
だが、先ほどの回復は間違いなく“
夢幻龍
(
むげんとう
)
”によるもの。無意識下で友妃が発動させたという可能性がゼロかと言われればわからない。
それでも今、夢幻龍が彼の手に握られているとなるとその可能性は万に一つとなってくる。
「んだよ、テメェ? そんな武器一本で俺を止められると思ってるのかよ」
侮辱がこもった笑い声を上げる赤髪の吸血鬼。しかしそれに全く反応することがない少年。
明らかに先ほどの雰囲気が違う。切羽詰まっているような感じではない。怒りに身を任せているような感じでもない。冷静。違う。冷酷という言葉が今の彼にはふさわしいような姿になっている。
「なんとか言ったらどうだよ、この野郎!」
憤怒の表情とともに再びこの世に姿を現した紅蓮の角を持つ牛が咆哮する。すると先ほどの業火が彼めがけて襲いかかる。
「あぶないッ!?」
体を動かそうとしたがすぐには動かなかった。言うことを聞いた時にはもう少年の寸前まで迫っていた。
もう避けられるような距離ではない。
夢幻龍は友妃以外には操れない。だから防御することもできない。
助けられないかった
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