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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
51.獰猛なる化物
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地面を蹴り上げて後方へと飛び退く。すると先ほどまで彩斗がいた位置に巨大な火柱が出現する。これは先ほどと同様の魔術だ。
「んなこと信じると思ったかよ! この場に居る時点でテメェが“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”っつうのは丸わかりなんだよ!」
赤髪が獰猛な笑みを浮かべてこちらへと続けて熱線がこちらへと襲いかかってくる。
後方に飛び退いた時のバランスを修正する間も無く飛んできた攻撃に重心が崩れた無理な体勢から銀の刀を振り上げる。
二つに分裂した熱線がわずかに両肩をかすめていく。それだけでかなりの痛みが彩斗を襲う。昨日の怪我も癒えていない状態でこれ以上のダメージを受ければただではすまないかもしれない。現に先ほどの戦いでも大きな怪我自体は負ってはいないが足にはかなりのガタがきている。
「さすがは吸血鬼の身体能力ってところか? だが、俺はそんなに甘くねーよ!」
鮮血に染め上げた右腕を天へと高々と突き上げる。大気へ膨大な量の魔力が放出されていく。
この感覚は吸血鬼が自らの血の中に住まわせている眷獣をこの世界へと解き放つ時の感覚だ。
止めなくては……。人間である彩斗が真祖と並び立つ吸血鬼に勝つためには本体である肉体に戦闘不能レベルのダメージを与えなければならない。吸血鬼の肉体は人間同様に脆弱。殴られれば痛いし、刺されれば血が出る。痛覚もちゃんとある。だが、眷獣が出現すれば本体に近づくことさえも困難になる。
その間にも魔力の塊は何かの形を形成していく。
彩斗は地面を前へと蹴り上げて赤髪との距離を一気に詰める。
策があるわけではない。むしろ考えなど何もない。だが、彩斗の体は思考することよりも動くことを選んだ。
銀色の刃が地面と当たって何度も引っ掻いたような異音が鳴る。手には嫌な振動が伝わってくる。
魔力から何かが飛び出そうとしていた。紅蓮をまとった頭角。金属質の硬質な体毛。二つの紅の宝石がこちらを睨みつけている。
その姿は恐怖そのものだ。人の命をまるで赤子の手でも捻るように消すことができる最悪の化身たる一体。だが、それも姿を現せばこそ真の力を発揮する。
姿を現さなければいないも同然。確認できないものは存在などしない。
「うおぉぉ───ッ!」
雄叫びをあげながら彩斗は地面を思いっきり上へと蹴り上げた。その距離約九メートル。
なぜそんな位置で踏み切ったのか彩斗自身もわからない。走り幅跳びの要領で跳んでは見たが、九メートルなどという距離を跳躍できるほど彩斗の運動神経はよくはない。常人よりも少し上というくらいだ。しかも、今は刀を持っている。
確実に届くわけがない。しかしこの一撃が届くと彩斗はわかっていた。それがどうしてかと言われても答えることはできないだろう。それでもわかるものは
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