5部分:第五章
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の言葉も聞こえていたのでこう問うたのだ。
「うん、ちょっとね」
「もう帰ったのか」
「別のところに行ったよ」
こう保正に答えた。
「別のところにね」
「そうなのか。どんな人だったんだ?」
「お爺ちゃんもよく知ってる人だよ」
保次郎は悪戯っぽく笑って祖父に述べるのだった。
「よくね」
「わしもか」
「そうだよ。とてもね」
「誰なんだか」
保正は話がわからなくなっていた。それで孫の話を聞いていて思わず苦笑いを浮かべたのである。
「わからんわ。さっぱり」
「だから知ってるんだけれどね」
それでも保次郎は笑って言う。
「まあいいよ。僕にもわかったから」
「僕には、じゃないのか」
つまり人ではないのかと。こう問うたが答えは変わらなかった。
「そう、僕にもだよ」
「ふむ。それでも何かわかったんだな」
「うん、よくね。これからさ」
彼はあらためて祖父に対して言うのだった。
「何かと大変なことがあるだろうね、日本も」
「それは当然だな」
祖父は孫のその言葉に静かに頷いた。
「何時だって大変さ。この船が活躍した頃は特にそうだったけれどな」
「それがわかったんだよ。だから」
微笑む。そのうえでの言葉であった。
「僕も頑張るよ。僕なりに必死にね」
「ほう」
孫のその言葉を聞いて。驚いた表情になる。だがそれは一瞬のことですぐににこやかな笑みになってまた言葉をかけるのであった。
「いいことを言うじゃないか。だがな」
「言葉だけじゃなくだよね」
「そう。動くことが大事だぞ」
「わかってるよ。じゃあ僕はこれからの日本の為に」
「頑張れ。いいな」
「僕なりに必死にやるよ」
爽やかな笑みになる。その笑みで見るのは海の彼方だった。
「これからの日本の為にね。あの人達と同じで」
「応援してるぞ」
保正もまた孫と同じ海を見ていた。かつて運命をかけて戦士達が出て行った海を。その海は何処までも青く清らかに澄んでいる。その海を眺めながらの言葉であった。
三笠 完
2008・2・13
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