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猫の憂鬱
―其の後―
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上の事ですら関心が無い。故に全くといって良い程喧嘩をしない。三十年近く一緒に居るが、互いの意識違いで喧嘩をした事が無い。
だからといって、胃潰瘍患う程仲違いする木島とも喧嘩をしない。喧嘩をしなかった結果、胃潰瘍になった。
他人に興味無いが、腹は立つ。立つのは専ら、自分の感情を害された時。取調室で怒鳴るのは、犯人が横着だからに過ぎない。話せと云って居るのに話さない、知らん存ぜぬ、女が泣くのが一番腹立つ。
龍太郎と同じに全く興味無いのが加納であるが、此方は怒らない。怒る代わりに只管他人を見下すのだ。木島と問題無く過ごせているのが証拠で、加納はなんというか、感情が欠落している。頭が良過ぎる為、他人の感情を把握出来ず、感情論、というものを一切持ち出さない。
だから今回、加納には驚かされた。
猫に対し、あれ程執着し、激高したのが。
「本郷さんから見て、井上さんて、奇妙に映らへん?課長も。」
「え?」
黙ってファイルの文字を追っていた龍太郎は顔を上げた。
「あの二人、子供が好きで、すっごい愛情深いやん?俺の目から見ても、奇妙に映るから、本郷さんには俺以上のもやもや持ってはんのと違うかなぁ、て。」
「もやもや…」
「好きなんは判る、判るけどなんで其処迄すんの?他人やん…。でも彼奴等の其の感情自体は判るけど、其れを理解出来てへん自分にイライラせん?も一つんトコで理解出来へんのやけど、何が理解出来てないのか判らない。」
「……嗚呼。凄く判ります。」
「其れね、他人に興味持たんからよ。感情の共有、てゆうんやけど、他人に興味無いと、理解出来んのな、感情論になるから。本郷さんは其れが愛情にも関わってる。だから人を愛せないんよ。でも、悪い事や無いよ?そんなん、正直言うて、恋愛て面倒やもの。誰かを好きになるて、一番神経使うんよ。やぁやん、そんな。俺、思うのな、逸そ、愛情なんか無くなってしまえば良いのに、て。」
ギィと背凭れを鳴らし、頭の後ろに手を置いた。
「羨ましいなぁ、本郷さん。」
「初めて云われましたよ。」
「あー、全部捨てて逃げ出したいなぁ。出家しようかな。」
出家、という言葉に龍太郎は笑い、其れに宗一は優しく微笑んだ。くしゃくしゃと頭を撫でられ、出家の必要無い程慈愛に満ちた宗一の顔を見た。
「菅原さん、凄いですね。」
「うん?」
「こう、表現出来ないですが。井上と居るみたいです。」
「はは、そら恐れ多いわ。あの人、すんごいからな、愛情。やから、本郷さんと一緒居れるんやろな。本郷さん、ゆうたら悪いけど、井上さん以外、友達居ないでしょう。」
「…はい…」
「そぉれでも問題無いんやから、ええなぁ。あっはっは。俺、友達なったげまひょか?」
「あー…、結構です。」
一頻り笑った宗一は椅子から立ち上がり、休憩室から出た。立った儘ファイルを
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