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猫の憂鬱
―其の後―
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、必ず冬眠する。人間だけよ。年柄年中起きてるの。冬に太るんも、冬眠の名残な。冬眠ていう生物の本能を、文明で削除したんよ、やから人間て、万年発情期なんよ。何時でも、子孫、残せるようにな。」
宗一の優しいと思った垂れ目は、今の龍太郎にはどんな物より残酷で卑劣に映った。
「春先に変なのが多いんも、冬眠の名残かなぁ。あったかくなると叫びたくなるもん。」
「嗚呼、判ります。叫びませんが。気分は高まります。」
「其れで叫びよんのは本物よ。」
煙草を持つ手で口元隠し、くしゃりと宗一は笑う。
嗚呼、好きだな、菅原さんの笑顔。
素直に龍太郎は思う。笑うと長い顔が一層長くなる、大きな口が一層大きくなる、見てるだけで此方迄笑顔になる。
「私。」
「うん。」
「菅原さんの笑顔、好きです。」
いきなりなんのこっちゃ、云われた宗一は口角下げ、垂れた目を此れでもかと開き、ふは、と鼻から息すると項垂れ、肩を揺らした。何故笑われるのか判らない龍太郎は仏頂面で見返した。
「あっはっは、そんなどストレートな告白、初めてや。」
「違います…」
「判ってる、判ってるよ。はは、おもろい。本郷さん、素直なんやな。」
笑顔が好き、等課長にも云われた事無い、と煙草を持つ手でカップを持ち、笑い疲れた溜息を漏らした。
「本郷さんは、アレな、Aセクシャルなんやな。」
「なんです?其れ。」
出された儘放置していた珈琲に口を付け、椅子の儘動く宗一を追った。本棚からファイルを抜き取り、パラパラと捲り、龍太郎に見せた。
「セクシャルは四つしか無いとされてたんやな。でも最近、パンセクシュアル、Aセクシュアル、ノンセクシュアルてのが、セクシュアルに加えられたのな。」
聞いた事も無い言葉ばかりで、龍太郎は、はぁ、としか云えなかった。
「四つのセクシュアル、判る?」
「はい。」
「で、本郷さん、貴方は此の四つだとヘテロセクシュアルに部類される…、んやけど、此の三つが加わった七つのセクシュアルで部類すると、Aセクシュアル…無性愛者になる。」
「無性愛者…」
渡されたファイルに目を落とし、定義を読んだ。
「無性愛者…、異性にも同性にも全く恋愛感情抱かず、全く性欲が無い人の事。」
「此の、ノンセクシュアル、と云うのは。」
Aセクシュアルの下にある文を指した。
「ノンセクシュアルは、他者に恋愛感情を持つけど、セックスする意欲が無い人。」
「嗚呼、成る程。」
「聞いたけど貴方、一回も人を好きになった事無いんやて?」
「はい。」
其れで一度、木島にしこたま馬鹿にされ、やっぱり人間じゃないんだ、と迄云われた。
なんだ、やっぱり、とは。
龍太郎からしてみたら、他人を我が命みたく愛せる神経が判らない、我が子でも無いのに。
他人に対し、全く興味が無い、正直、兄弟のように育った井
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