木曾ノ章
その8
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木曾は一人で、誰にも告げず向かった。なんて人なんだ、全く。
「何でもない。私は先に行くから、魁は雷、頼んだよ」
そう告げて、速力を上げる。雷達から十分に離れた事を確認してから、空を眺めて、涙が溢れないように堪えた。
日付が変わる前に、珠瀬の近くまで戻ってきた。
「こちら響、戦闘状況は?」
尋ねてすぐ、最上の声が戻ってきた。
「響か……戦闘は継続中。ごめん。防衛線は破られた。港に被害が出始めてる」
「提督に連絡は今着く?」
「重要事項?」
「とても」
「ちょっと待って」
そう言って暫くして、無線が入ってきた。
「響か、どうした」
柏木提督の声だった。思ったより早く連絡がついたことに安堵する。
「丙艦隊に姫の存在を確認。木曾が単艦で残り私達は撤退しました。私を除いた四艦は暫くしたら私に追いつきます」
「な! 見捨てたの!?」
最上の声は、やや責めるようだった。
「大方、撤退時に一人だけ転進したんだろう」
「その通りです」
「響は四艦を守ったんだ。責めてやるな」
「響、ごめん」
最上の声を聞きながら、気にしていないと言葉を返そうとした時、不図、海面の下で何かが私へ近づいる事に気がついた。そうして一拍を置いて、それが何だか分かった。魚雷だ。視線を動かす。居た、顔だけを海面から出した潜水艦型の深海棲鬼が。
もう避けるのは不可能な距離だった。できることはと言えば、今繋がっている無線に何かを言う事のみ。だから、私は叫び声を噛み殺す。そうして、その目の前に近寄る兵器を見ながら、恐怖を飲み込んだ。助けて何て無駄な事は言えない。私は、艦娘なんだから!
「敵の潜水艦を−−−」
直後、魚雷は私の足元で爆裂した。
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