12.人には人の得手不得手
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他人に不安や恐れを見せることは彼女自身が許さない。しばし黙考したアイズは、アニエスにこう返した。
「行くときは、声をかけて。道、教えるから」
「………よいのですか?貴方の主神の意向に反していますよ?」
「アニエスは止めても行くと思うから……客人の道案内と護衛も、意向のうち。ダメなら怒られるだけ」
アニエスは驚いたような――ほんの少しだけ安心したような表情を見せた。
その安心がまた、アイズを少しだけ安心させる。
「アイズ………ありがとう、ございます」
「色々と教えてくれたお礼。戦いはまかせて」
「いえ、そうではなくて……」
なにやらもじもじしながら、アニエスは上目づかいでちらっとアイズを見た。
普段のクールな雰囲気は鳴りを潜め、恥じらいに頬を染めながらおずおずと告白する。
「その、実は私……方向感覚が人より鈍いみたいで……遭難したらどうしようって、心細かったんです……」
「―――………」
かわいい。
彼女の姿を見て、そう言葉に出しかけたアイズだった。
結局その約束は、その日より数日後――ティズ・オーリアが目覚める日に果たされることとなる。
そして、その日アニエスは初めて本当の『使命』を自覚する。
= =
物語は一旦、ヘスティア・ファミリアの冒険へと戻る。
ダンジョン第6階層。二人のステータスの高さゆえに一応ながら潜る許可を受付嬢に貰ったその場所に、若者二人の声が鳴り響く。
一人はベル・クラネル。先輩に追いつくという目標を掲げ、主神が留守であるその日も魔物を狩って経験値を溜めている。彼の短刀は既に数多くの魔物を屠っていた。そして、その後ろにもう一人。
「リングアベル先輩!そっちに魔物が行きました!!」
「魔物もきっちりエスコート!但し、女性と違ってあの世行きだ!!」
槍ではなく剣を抜いたリングアベルが、不敵な笑みと共に魔物たちへと果敢に踏み込んだ。
オラリオに来て以来ずっと槍を握っていたが、剣を握る感触がひどく懐かしく思えた。倒れた時に持っていたあの黒い柄の剣は、やはり自分で使っていたのだろう。アドレナリンの興奮とは対極に、その集中力はどこまでも澄み渡っていく。
強い既視感に全身が疼き、弾かれるように剣が煌めいた。
「せやあああッ!!」
『ギャァァアアアアッ!?』
瞬刃一閃。目の前のシャドウ・ウォーリアが、瞬時に繰り出された斬撃ですれ違いざま、鮮やかに引き裂かれた。その太刀筋にブレや迷いはなく、剣が体の延長線上にあるように付いてくる。リングアベルはその事には浮かれず、すぐさま次の魔物へ剣を振るった。
「スキだらけだな!」
『グオォォォォッ!?』
魔石を傷付けない器用な太刀筋のまま更に踏
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