12.人には人の得手不得手
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探しに出かけている。そして普段レフィーヤがべったりとくっついているアイズは、自分の分の食事だけ持って生存者の少年がいるテントへ行ってしまった。どうやら包帯の巻き方や病人の看病の仕方を勉強しに行っているらしい。フィンは今は皆と一緒に食事をしているが、暇さえあれば兵士団の小人族と意見を交換している。
(我が子の成長を見守る……ガラやないなぁ、こういうの)
デザートの杏子羊羹を爪楊枝で食べながら、ロキは内心で苦笑した。
「あ、これウマい………杏の甘酸っぱさと羊羹の甘さが合うわぁ」
「いやー、フルーツも山菜も野菜も全部美味しいですねーカルディスラは!」
「海の魚と川の魚が両方食卓に並ぶのはこの国ならではだね!」
アカン、この土地意外と穴場観光地やわ。来年からも来たいなぁ、などと考えるロキであった。
……出来ればあの大地を穿った物理的な穴とは関係なしに。
ロキが思わぬグルメに唸っていたその頃。
「えっと……こ、こう?」
「違います。包帯はもっと均一に巻かないと中だるみして患部がむき出しになってしまいます。あと、少しきつく巻きすぎです。止血ならともかくガーゼを固定するだけならある程度緩めないと患者の血流が悪くなります」
「こ………こう?」
「そうです。その調子で巻いて………はい、その辺りで包帯を固定して端を切って。せっかく巻いた分を取り落さないように気を付けて」
「んっ……」
指先が疲れから微かに震えるが、なんとか練習用包帯を結び終えたアイズは、額の汗をぬぐった。
魔物よりも包帯の方が手ごわい!と、大真面目に戦慄する。練習の開始からさほど経ってはいないが、既に普段やらない作業の所為で集中力が大幅に摩耗している。
包帯のチェックをしていた先生――という名のアニエスは、練習台に差し出していた自分の腕に巻かれた包帯をチェックすると頷く。
「……ちゃんと巻けているようですね。合格です」
「戦いならもっと集中力が続くのに………アニエス、すごい」
「そんなこと……風のクリスタルの神殿は街と距離があったので、けがの治療や最低限の医療知識は修道女たちが教えてくれました。ほんの初歩的なものですから、アイズもすぐに覚えられます」
「それでも、アニエスはすごい。私、そんな初歩も全然分からなかった」
アイズは現在、救助された銀髪の少年の看病をしているアニエスから簡単な応急処置の方法を習っていた。客人である筈のアニエスがこんなことをしている理由は、彼女が「何もしないのは申し訳ないから」と治癒魔法を使ったことで彼女が適任だとされたからだ。
同年代の女の子と接した機会の少なかったアイズだったが、あっちもあっちでその辺の事情が同じらしく、結果的に今は互いに呼び捨てで接している。
包帯の
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