12.人には人の得手不得手
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を入れる、崩落の穴だ。
物理的なそれではなく、世界の理そのものを穿つ闇そのもの。
不変不滅の超越存在の絶対性さえも揺るがす終末の時代の風が、あの奈落の大穴から吹き込んでいる。巨大な『化物』が、腹を空かせて覗きこむような餓えた風が。
この奈落の底に、あの光と共に感じた悪意の塊が潜んでいる――そんな錯覚を感じる。
これは予兆だ――嵐の時代が来る、予兆だ。
ロキは、誰に言うでもなくそう確信した。
= =
「――魔物が活性化しとる理由は、間違いなくあの大穴や」
ファミリアの食事中に、ロキはポツリとそう漏らした。
カルディスラ王国から支給された食料に舌鼓を打っていたファミリアの意識がロキへと移っていく。
その多くは未だノルエンデ村の悲惨な末路に対して実感が湧いていない様子で、食事を楽しみつつもどこか心の隅で「これでいいのか?」と自問してる風に見えた。
構わずロキは話を続ける。
「あの大穴の底から……なんちゅうかな。邪なる力を増幅する波動みたいなもんが漏れ出しとる。ダンジョンが強い神気を感じた時にモンスターを強化しようとするのを知っとるか?あれを薄めたような奴が絶え間なく漏れとる……」
「絶え間なく、ですか……それじゃこの周辺の魔物はこれからも段々と強くなると?」
「せやな。今はまだパワーアップはしてもオツムの方が間に合っとらんけど、多分ちょっとずつ強くなっていくと思う。………問題は、や」
木の芽と春キノコのグリルを咀嚼していたフォークがピッと空に向いた。
「大穴から漏れたその瘴気が、大気を通して星中にバラ撒かれとんねん。今はこの周辺だけの狂暴化で済んどるけど……多分、1年もしたら狂暴化は気流に乗って世界的に拡散されてくやろうな」
「……………!!」
ざわり、と全員に動揺が走った。まだ彼らの中では人命救助がてらの遠征という感覚しかなかったのだ。話が急に大きくなって、彼らなりに不安を覚えたのだろう。それでいい、とロキは思った。
彼らはオラリオの外にも世界が広がっていることを忘れがちだ。特にこれからは正教圏との諍いが増えていくだろう。そんな時に外に無頓着では、相互理解や停戦どころか積極的に戦って被害を広げかねない。
今後、彼等には広い視野が必要だ。現にフィンやアイズなど色々と考えさせられることがあったらしく、ファミリアの数名が自主的にいつもと違う行動をとっていた。
ベートは「夜目が利くし鼻があるから」と兵士団の一部と周辺の生存者を探しに行った。自分の能力をこんな風に使ったことがなかったためか、正義感の強い兵士団たちの煽てに乗せられて微妙な正義感に目覚めつつあるらしい。
レフィーヤはカルディスラの城下町に学術魔法の魔術書を
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