第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
14話 帰り道
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堵の表情を見せる。
「ここが俺達の拠点だ。窮屈な思いをさせて済まなかったな」
「いいえ、私も保護して頂いた身です。感謝こそすれ不満を感じる道理なんてありません」
「そう言ってくれると救われるよ」
主に誘拐疑惑からくる罪悪感からな、と内心で付け足しつつ、リラックスしてもらえるように――――仮にもモンスターである彼女にこの気遣いが意味を持つかは不明だが――――昨日も客に振舞った茶を用意する。ポップアップ・メニューの操作では味気ないので、常にマニュアルで行っているお茶汲みも、今では手慣れたものだ。部屋の隅のチェストの上に備えた茶器で淹れた茶と、ありあわせの茶菓子も適当に用意して、テーブルへと戻ろうとした、その時だった。
「………燐ちゃん?」
「あ、起こしたか」
ちょうどティルネルの横たわるソファの後ろ側に位置する一室からヒヨリが姿を現した。自らの《裁縫》スキルによって作成したネコ――――のような《へちゃむくれ》――――が無数にプリントされた寝間着を纏った姿の相棒は未だ覚醒していないらしく、覚束ない足取りでリビングの中央まで歩を進め………
「ちょっ、待っ………ごふっ!?」
「………あれ、やわらか………って、ええええ!?」
ソファに、正確にはソファに横たわったティルネルの胸あたりに腰掛ける。寝袋から勝手に抜け出すと思って放置していたが、どうも律儀にそのまま包まって待っていたらしい。これについてはティルネルの性質に一抹の不安を覚えずにはいられない。
ヒヨリもヒヨリで、腰の下で起きた惨劇に気付くと突如として悲鳴をあげる。一気に眠気も失せたらしい。少々面倒な状況だが丁度良い。ティルネルについてヒヨリにも話をしておくに越したことはないだろう………
「燐ちゃん! どうしてこんなことしたの!?」
「床に置くのも可哀想だろう?」
まさか、踏んづけたことを俺の所為だと言いたいのだろうか?
だとしたら、確認を怠ったヒヨリにも責任の一端は帰せられるべきだと思うのだが………
「そうじゃないよ! どうして女の子を誘拐しちゃったの!?」
「ち、違う! 誘拐じゃないぞ!? ここまで同行してもらうのに許可だって取ったんだ!」
誘拐などではない。いつまたエンカウントできるか分からない上に、先の突然気を失う様子を見ていれば、到底放置しておくという判断は出来ない。あの場面において最善の策だったはずだ。それをしてなぜこれほどの仕打ちを受けねばならぬのだろうか。納得できるはずもない。撤回を要求する所存である。
「フゥーン、ヒヨリちゃんだけじゃ満足出来ずに女子を拉致監禁カ。………リアルじゃ事件ダゼ?」
そして、背後からは最も聞きたくない人物の声に酷似したそれが
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