第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
14話 帰り道
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ると、いきなり抱き付いてきて、上目遣いで覗き込んでくる。ハラスメントコードは作動しなかった。
『ごめんなさい。………あなたは私の為に頑張ってくれたのに、無駄にしちゃった………彼氏をゲットして、ありがとうって言いたかったけど、こんなに近くに大切な人、いたんだもん………私、諦めない………自分の気持ちに嘘は吐かない。振り向いて貰えるまで、これからも頑張るわ』
そう、意味不明な決意を告げて彼女は消えていった。やっと達成されたお使いクエスト、その報酬アイテム入手を報せるウインドウに触れ、アイテムをオブジェクト化すると、淡い青の結晶が一つ。
――――アイテム名は《解けぬ恋心の結晶》。効果はテイムモンスター【Spirit Of Youtree】の召喚。
掌で使用されるのを待つ結晶を見つめ、深呼吸。散乱する酒瓶の山にそっと置いてその場を後にした。
………と、そのクエストの一部始終をプレイヤーの用いる用語を出来る限り排した言い回しを以て聞かせる。それと同時に苦い思い出に精神が病んでいくような心地さえした。どう記憶を精査しても、あれに有難味を求めるのは困難だ。精霊というより、もっと別の何かだ。悪霊に近い。
「………その精霊は、今も独りでいるんですか?」
「さあな。普通に旅をしていれば出会う事さえ困難だ。俺の場合は巡り合わせが良かったのか悪かったのか知らないが、どちらにせよ精霊と人は相容れない。共にいるのは互いの為じゃないから、あれとはそれっきりだな」
MMOにおけるプレイヤー同士での恋愛面での縺れというのは往々にしてあるようだが、例え仲間になるとはいえ面倒臭い性質のNPC――テイムモンスターである以上は、厳密にはNPCではないのだろうが――に絡まれては、ソロでの活動を主とする俺ではおちおちゲームを楽しむ事さえ出来ない。ティルネルの懸念している、精霊の抱える孤独も可哀想なのだろうが、お断りする誠意もまた優しさなのである。
「でも、きっと、リンさんに逢えて嬉しかったんだと思いますよ」
「どうだろうな。体の良い逃げ道にしか見られていなかったのかも知れないけど、依存するだけで自発的に動こうとしなければ、そいつの為にならんのさ」
クエストの話をしていたつもりだったのに、どうして脱線してしまったのか腑に落ちないが、過去の話もいい具合に暇潰しにでもなれば十分だ。借家の門前まで、然して時間が気になることもなく到着していた。ボソボソと何やら呟くティルネルを担いだまま、ドアノブを捻って進入する。
ベランダから差し込む朝日に目を細めつつも、視界はすぐにアジャストされる。出入り口を施錠して、リビングのソファにティルネルの入った寝袋を横たえ、縛っていた口を解放して顔を出させると、大きく息をついて安
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