第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
14話 帰り道
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ケない事なの………?』
怖気のはしる問いかけ。憂いを帯びた麗人というイメージに亀裂が走り、精霊NPCの向こう側で数本の酒瓶が散乱していたのは、未だに記憶が定着を否定するところである。
回れ右して立ち去ろうとする足をなんとか制止して、気を取り直して声を掛け直そうとするものの――――
『別に寂しくなんかないの。………でも、友達がみんなゴールインして、私だけ取り残されて………私だって頑張っているの! 本当よ!?』
といった具合に力説が始まってしまったのである。しかもよりによって、彼女によって胸倉を掴まれ、そのまま前後に揺さぶられる。半透明で細身のくせに驚異的な筋力値を持ち合わせていたために引き剥がそうにもビクともせず、いつしか号泣しだした頃にクエスト受注の是非を問うウインドウが出現し、若干やる気を殺がれながらも了承。
その後は《エルフ秘伝の若返りの霊薬》の製法を探るために野営地へ単身潜入したり、その薬品を再現する為の材料に東奔西走したり、異性を虜にするという――――プレイヤーには花の香り程度にしかならない――――《古精霊の芳香》なる香水を取りに行かされたり、やたら露出のきついデザインの《霧絹のドレス》とやらを調達させられたりと、行き遅れた精霊の婚活のために馬車馬の如く使い走りさせられるというお使いクエストに付き合わされる羽目になる。それでも挫けずに全ての要求を応え、一定時間を経てまた会話するという段階まで漕ぎつけて期を待つ。お世辞にも簡単なクエストとは言えなかった。だが、要求アイテムを渡すごとに希望と活力が増していく彼女には、NPCとはいえ少なからず仲間意識に近しいものを感じるまでに至っていた。会話をする機会も多く、設定程度とはいえ、彼女の事はある程度理解してしまっていた。その待ち時間も、彼女が婚活パーティーにおいて奮闘している裏返しだ。
精神面に難点が山積されていようと、容姿だけは非常に恵まれている。黙っていれば、いや、せめて問いに対して暴走せず、頷くだけにしてさえいれば………などと考えているうちに、待ち時間は過ぎ、クエスト進行を伝えるウインドウが出現。報酬と彼女の戦果に期待しつつ、大樹の頂に赴く。
『私の、何がいけないの………? ただ、温かい家庭が築けたらって、子供をたくさんつくって、家族に囲まれて、幸せに暮らしたいって………ただ未来予想図を話し合おうとしただけなの! でも、みんな逃げていくのよ!? ひどいわよ! 横暴よ! ………ねぇ、アナタモソウオモウデショ?』
『みんな正常だ! どうして黙っていられなかった!?』
よりにもよって惨敗の報告が聞かされる。しかも自分で墓穴を掘ってしまっては救いようがない。
まさか、クエスト失敗なんてことにはならないだろうかと危惧してい
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