第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
14話 帰り道
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
切り発車も甚だしい博打ではあったが、確かに《門番》の監視を掻い潜ってみせたことからティルネルはシステム上消失したことで感知不能となったことが確認できた。こうしてレアエルフの確保が叶ったばかりか、奇しくもここに謎テクが誕生したのである。
「まあいい。それより、ここまで連れて来ておいてアレだけど、森から離れても大丈夫なのか?」
そして、こうして彼女と会話を途切れさせないようにしているのは、彼女を操作するシステムに変調がないかという確認と、未だ現実として受け入れていない為に繰り返す無意味な存在確認だ。後者を解かりやすく言うと、夢オチだったという結果になるのではないかと疑い怯えているのである。決して誘拐した罪悪感からの現実逃避ではないと思いたい。寝袋で自由を奪われてこそいるが、同意は得ているはずだ。口を縛って視覚が無くなってしまったかもしれないが、無理矢理ではないはずだ。だから俺は悪くない。
「それは、大丈夫です………多分」
――――そして、思う。どうして断言できないのか、と………
「あ………済まないが、ここからはプレイヤー………じゃなくて、人族の戦士が多く現れる。彼等に姿を暴かれれば良い様にはならない。決して動かないようにな」
「わかりました」
大樹の根元付近で手筈を伝え、背負うようにして運んでいたティルネルを、まさに荷物を運ぶように肩に担ぐ。あまり重さを感じないようにという配慮から背中に密着してくれていたが、これからは物を演じて貰う以上、可能な限り脱力しているようにしてもらう必要がある。最後に、不要意な場所に手を触れないよう留意しつつ、《無音動作》を使用して洞へと入る。
「これが《人族の住まう霊樹》………まさか踏み入れる機会が訪れるなんて思ってもみませんでした」
「霊樹って、そこまで有難いものかは微妙だけどな。この樹の精霊、頭おかしいし」
「あたま、って………精霊に逢ったことがあるんですか?」
「ああ、あるけど………いや、でも………やっぱり精霊なんだろうけど、どうなんだろうな………」
声音を弾ませるティルネルを見遣り、話のタネにでもなればと、ベータテストが行われていたころのSAOでの記憶――――クエスト《ヒトリノセイレイ》の仔細を思い起こしつつ語る。
NPCから得た、隠しクエストに繋がりそうな幾つかの情報を参考に深夜の《ズムフト》を探索し、ついに発見した樹の精霊。淡い青の燐光に包まれた女性の姿をとるそれは最上層の枝葉の森の中に腰を下ろした姿で待機していて、神秘的な佇まいと憂いに満ちた表情によって彩られた美貌をよく覚えている。
………しかし、いざクエストを受けようと声を掛けてみると、予想の範疇を超えたものだったことに気付かされる。
『独身って、イ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ