第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
14話 帰り道
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路になるだろうか………
――――更に進んで五メートルを切る。
両手槍の穂先が揺れた。武器に細心の注意を払っていたためか、脳内に鳴り響いた警鐘に従って咄嗟に後方へ飛び退く。しかし、こちらの気など全く意に介さずに欠伸を漏らす。NPCの眠気の演出がこれほど恨めしく思ったことはなかった。
――――ついに《門番》の至近距離へと踏み込む。
「やあ、ここは《ズムフト》だ。ゆっくりしていってくれ」
「驚いただろう。この樹が我々の故郷なんだ」
………歓迎された。
ともあれ、やがて表示される【INNER AREA】のシステムメッセージ。緊張が一気に切れそうになるのを堪え、一応の安否確認も兼ねて肩に担いだ寝袋の中のエルフに声を掛ける。
「大丈夫だったか?」
「はい。とくに問題はありませんけど、今のはすごいです! 本当に私の事が勘付かれなかったです! 人族の寝袋には《朧夜の外套》のようなまじないが掛けられているんですね!?」
「マジナイ? よくわからんが、これはテクの応用が偶然ハマっただけで………って、言っても分からないよな………」
正直、成功してもらわなければ困るのだが、成功自体を信用出来なかったというのもまた事実だ。
キリトがアスナを第一層迷宮区から救助する際に用いた手段は《内部に収納スペースを有するアイテムは、その内容量に問わず元来の重量を保つ》という特性を用いたものだ。つまりは、寝袋等の収納スペースに収まった重量の設定されたプレイヤーも含むオブジェクトそのもの重さは、収納される間は消失するという解釈が出来る。
しかしながら、寝袋に入ったアイテムに起こる現象は重量の消失だけではないのではないかという疑問が浮上した。というのも、ティルネルを寝袋に納めて安全地帯を目指していた道中、ティルネルはうなされていたのか時折呻くことがあったのだが、周囲で行動するモンスターの聴覚感知には一切引っかからなかったのである。
当時は《無音動作》が発動していたのだが、それ自体は使用者以外の発する音は当然の事ながら消音の対象にはならない。発動中に使用者が声を発した場合は厳密には認識可能であるものの、音を認識できるのは使用者のみであり、外部に漏れる音は全てシステムによって遮断されてしまう。しかし、ティルネルは独立したアバターのはずだ。使用者のみを対象とする効果の恩恵を享けたというのであれば、ある一点に焦点が向けられる。
つまり、寝袋だ。その内部は《収納スペースの内部》という一時的なフィールドであると仮定すれば、呻き声をあげていたティルネルは《その場に居ながらに異なる座標に存在する》状態にあり、その座標が《無音動作》使用者である俺の装備する寝袋の中にあれば、音は確かに遮断できるものとなる。見
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