第8話「ソンナ強ク美シイモノニ私ハナリタイ」
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夕焼け色に染まる空の下でトントンとカナヅチがあちこちで鳴る。
闇天丸との戦いで壊された結野家と巳厘野家の屋敷を術者式神総出で修復していた。
勝手に江戸中の式神を解いたことで晴明の立場が危うくなるかと新八は心配したが、それは復活した闇天丸を倒すために、と幕府からのおとがめはなかったらしい。
また邪神の復活は一千年を経て封印が弱まったことが原因だと巳厘野衆にも処断はなかった。
今回の件は結野衆と巳厘野衆が共に力を合わせて闇天丸を調伏しただけのこと、と晴明は言う。
「誰かさんが大暴れしたせいで屋敷だけじゃない、結野と巳厘野の一千年にわたって隔てていた大きな壁も跡かたもなくブッ飛んでしまったわ」
崩れた壁の間で笑い合う結野と巳厘野の陰陽師たちを見ながら、晴明が愚痴るように言う。だがその口元には僅かに笑みが浮かんでいた。
「まったくどう責任をとってくれる?」
「悪いな。ついでに何でもやってしまうのが、兄者の悪い癖なんだ」
結野家の縁側に座る新八と神楽の隣で双葉がそっけなく答えた。
「これではクリステルをめとり、家督をつぐだけでは足りぬぞ」
「……お主、また政略結婚で悲劇を繰り返すつもりか。言っておくが、あんなだらしのない兄者を婿に 迎えた一族は滅びるぞ」
鋭い視線を向ける双葉に、晴明は苦笑して言う。
「フン冗談じゃ。だがしばらくは家に帰れると思うな。一族あげての盛大な祝宴が待っておるぞ」
「そうか。ならその時はピザの用意を忘れるな」
個人的な注文をしてから、双葉は姿の見えない兄を探しに出た。
* * *
「こんなところにいたのね。探したのよ」
不意にかけられた声に振り返ると、結野アナが走り寄って来た。
「ありがとう」
「え?」
突然お礼を言われるも、何の事かわからず、双葉は少しだけ首を傾ける。
「闇天丸から助けてくれたじゃない」
そう言われ、さっきの言葉が闇天丸に捕まった時のものだと双葉は悟った。
「あの時のお礼ちゃんと言えてなかったから」
「あんなのは借りを返しただけだ。礼を言われる筋合いはない」
「借り?」
「万事屋で。式神が金棒投げた時の」
手短過ぎる説明だが、すぐに結野アナは「ああ」と納得する。
「借りは返さなきゃ気が済まないんだよ」
「素直じゃないのね」
「……よく言われる」
不器用な物言いに微笑する結野アナと無愛想に呟く双葉。こういうやりとりに関しては、やはり結野アナの方が一枚上手らしい。
「それにしても闇天丸の攻撃を跳ね除けちゃうなんて凄いわね。私びっくりしちゃった」
「お主が書いた術札だったからな。出来が良かったんだろ」
「術札の威力は作り主より使う本人の力が重要なの。邪神と戦えるぐらい発揮できたのって、双葉さん自身にかなりの霊感があったからだ
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