第8話「ソンナ強ク美シイモノニ私ハナリタイ」
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宇宙のお祭りである。その一大イベントが今度江戸で開かれるのだ。
目障りだと思うくらいテレビで流れていたCMで知っていたが、そこに大好物が展示されると知って双葉は万星の話題に一気に惹きつけられる。
「ええ。そこでもグルメリポートするからとっても楽しみで」
「仕事でピザが食べれるとは羨ましい限りだな」
「一緒に来てくれれば、双葉さんも食べれるよう打ち合わせしておきますよ」
「いいのか?」
「もちろん。万事屋のみなさんも連れてぜひ来てくださいね」
にっこり笑う結野アナのお誘いを受け入れ、表情には出さないが双葉はどんなピザが出るのか楽しみに万星博覧会を待つことにした。
「そういえば坂田さん見なかった?」
ピザトークに一区切りがついた所で、結野アナはすっかり忘れていた用件を双葉に尋ねる。
「兄者に何か用か」
「依頼のお礼……本当に何から何までお世話になったから」
「そんなものいらん。兄者なら、コレだけで十分だ」
結野アナが手にする分厚い封筒を受け取らず、代わりに双葉が取り出したのは二枚のサイン色紙。それを見て何かを悟った結野アナは、快く頷いて色紙にペンを走らせる。
そして結野アナは手慣れた手つきで書き上げ、二枚の色紙を双葉に差し出した。
双葉はその色紙を黙って受け取ろうとしたのだが――
「ありがとう」
唐突に言われた二度目の感謝に、双葉はまた疑問の声を出してしまう。
闇天丸の件についてはさっき言われたし、もうお礼を言われるような事はしていないはずだ。
伝え足りないと思ったのだろうか。だが、さっきと違ってお天気アナは妙にしんみりとしている。
どうしたのかと戸惑う双葉に、結野アナは静かな笑みを浮かべた。
「……気づかせてくれて」
その一言で全てを悟った。
双葉は何も言わず、ただ黙って結野アナを見る。
「あなたが教えてくれなかったら、私一人でずっと笑ってるだけだった」
いつからだろう。
ただ雨に打たれるだけの日々を送るようになったのは。
濡れているだけだったら、江戸の空も晴れることはなかっただろう。
「本当にありがとう」
暗い陰を消し去って、改めて結野アナは天真爛漫な笑みを浮かべる。
心から感謝された。
双葉は照れるわけでも無視するわけでもなく、沈む夕陽へゆっくり視線を動かした。
「……笑顔は好きか?」
「ええ」
脈絡のない質問でも結野アナはすんなり受け止め、自分の想いを語り始めた。
「一族は国や家柄を守るために、巳厘野家と争うことしかしなかった。江戸を守護するため、小さい頃から修行を積んできたけど、それじゃ何も護れないって思ったの」
「だから天気アナに転職したと」
双葉の一言に結野アナは苦く微笑する。
「落ちこんだりする時があっても、市井の人々の笑顔を見れば不
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