2部分:第二章
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は最高の調味料というわけである。とりわけ今の保次郎の年代ならば誰でもそうである。彼とても例外ではないのだ。
「だから。我慢するよ」
「それならいい。さて」
保正は展示室にあるものを全て見終わってから孫にまた声をかけるのであった。
「ここは終わったし次は何処に行くか」
「艦橋には行けるかな」
保次郎は不意に祖父にこう尋ねてきたのだった。
「そこの絵に艦橋が描かれているけれど」
「ああ、あれだな」
保次郎が指差したのは一枚の油絵であった。そこには海軍の軍人達が描かれている。それもまた三笠の絵であった。
「あの絵ってここの艦橋のだよね」
「そうだよ。あそこに行きたいのか」
「絵に描かれているからね」
興味を持ったのだ。そういうことであった。
「だから。どうかな」
「それはいいことだな」
祖父は孫のその提案を聞いてにこやかな笑みになる。そのうえでまた言うのだった。
「いい場所に気付いた」
「そこまで言うんだ」
「当たり前だ。あそこが一番大事なんだからな」
彼にしてみればそうなのだ。それを孫にも告げる。
「あそこで指揮を執ったしな」
「真ん中の小さいお爺さんがだよね」
「待て」
孫の今の言葉には顔を顰めさせた。
「何が小さいお爺さんだ」
「だって本当に小さいじゃない」
彼は何も知らないといった調子でまた祖父に言葉を返した。
「偉い人なんだろうけれど」
「あの人が日本海海戦を勝利に導いた人なんだぞ」
「あの人が!?」
「そう」
強い声で孫に説明する。
「その名も。書いてあるだろ」
「うん、それもかなり」
三笠の展示室だから当然である。その名は。
「東郷平八郎か。昔の名前だね」
「それだけか?」
「うん、それだけ」
またしてもあっさりと特に感慨も入れずに答える。そこには何の悪気もない。しかし思い入れもまたないのは確かなことであった。
「戦争を勝たせた人なのはわかったよ」
「当時の情勢は?」
「それもね。一応は」
わかってはいる。しかしそれでも感慨も思い入れも湧かないのであった。
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