11.剣の姫が掴むもの
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からない父親で、戦士として彼の娘に産まれたことを感謝するほどに立派な騎士。二つの側面を持ち合わせたその国のトップは、呼び出したイデアに突然こんなことを話した。
「イデアよ………この城に籠り訓練を始めてから、お前も随分経った。カミイズミからもその成長と熱意は聞き及んでいる」
「あ……ありがとう……ござます!お父様!!」
「うむ………未熟ながら戦士として形になってきた今、お前をこのエタルニアの凍土の外へ送り出すことも通過するべき儀礼となったと言えるだろう。よくぞここまで成長した……」
「お、お父様……!!」
父、ブレイブがイデアを褒めるようなことを言うのは、特に近年では稀な事だった。おかげで最低限守るつもりだった敬語も崩れてしまうほどに――嬉しかった。少しは自分の事を見つめてくれているのだ、と。
だが、その喜びは次に待っていた衝撃に吹き飛ばされることになる。
「だが、外の世界に諸手を挙げて送り出すわけにはいかん。よって――一週間後、この聖騎士ブレイブが直々に剣を交え、お前の技量を確かめて判断を下すことにする」
「え………えええええええええええええええッ!?お、お父様があたしとぉッ!?」
聖騎士ブレイブ。エタルニア最強の剣士が一人にして永遠の目標。
その父が、今まで剣の稽古をつけてくれることも数えるほどしかなかった父が、「直々に剣を交え」て、そのうえで「外の世界に送るかを決める」と言ったのだ。
今、イデアは人生で初めて父親に試されている。
お前に覚悟があるのか、お前に信念があるのか、その信念を貫き通す力があるのか、と。
そして、その試練を越えるならば、父はこの自分をエタルニアの外へと送り出してもいいとまで確約したのだ。イデアは唐突な試練と、それに隣り合ったチャンスに大きく戸惑った。
「お父様は何を思ってあんなことを……でも、試すと言ったからには期待があるってことだよね?そうよね、お父様………」
知将ブレイブは、可能な作戦を確実にこなし、不可能な作戦を可能の域に引きずり込む男だ。
その父が「試す」と言ったのだ。試す価値が今のイデアにはある、と。
自分の掌を見る。毎日剣を握っている所為でその手は部分的にごつごつしているが、それこそが彼女の努力の証でもある。その努力を今こそ形にするべきではないのか?沢山の人から受け取った沢山の経験を総動員して、あの厳粛で厳格なる父に挑まなければいけない日が来たのではないか?
「すぅー………はぁー………よっし!!お父様にいちばん近い戦い方をするのはハインケル辺りだよね!今はエタルニアにいる筈だし、頼み込んで訓練付けてもらうかな!!」
イデアは決めた。
残された時間を目一杯に使って己を鍛え上げ、万全の状態で父に挑む。
そして――必ず認
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