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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
11.剣の姫が掴むもの
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は一生魔法を得ないままだったりもするが、本格的な魔法使いだと3つ以上の魔法を扱えることもあり、発展形に『魔導』というのも存在する。後は詠唱や魔力などの実践的な知識を得て、実際練習することで魔法は扱えるようになる。

「そうだ。そして学術魔法とはこの二つとは全く違う性質を持っている。アンチ・クリスタリズム圏では好まれないためにオラリオには出回っていないのだが……学術魔法とは、他の二つと違い術式などを一から理解して組み上げなければならないんだ」

 先天性魔法は「気が付いたら使えている」、本能や遺伝子に刻まれた感覚的な物。後天性魔法は起こす術の効果をあらかじめ魔導に長けた神が作り上げ、それを人に移植するような形で行使できるようになる。
 どちらにも共通しているのが、術式そのものは予め体に内包されているため詠唱すればいつでも安定して使用できること。つまり安定性があり、固定的で、習得自体は比較的容易だ。

「学術魔法は文字通り学術的な魔法だ。使用するたびに術者が知識を頼りに頭の中で術式を一から構成し、完成させることで初めて発動する。前二つの魔法と違って魔力のコントロールに失敗すると爆発せずに四散するだけで、しかも非常に手間がかかるために習得に時間がかかる。神の齎した魔法とも種族的な魔法とも違い、学術魔法は純然たる学問なんだ」
 
 だからこそ、神の間ではこの魔法学問を「未熟で未完成で下等な学問」とみなす者が多い。
 実際には学術魔法の基礎理論は神の組み上げる魔法と本質的に違いがないので、本音は神の御業を人間が自分で作っているのが気に入らないだけなのだが。

 さらに付け加えるなら、学術魔法は先天素養や神の存否に関わらず習得が可能な代わりに、その取得は人によっては10年以上の歳月が必要となる狭き門だ。故に使い手の絶対数そのものが少ない。そして拾得者の8割が正教圏の人間であり、そのうちの殆どが正教かエタルニアの学問所出身である。アスタリスク所持者の半分は学術魔法の使い手であるため、実質的には正教式魔術と呼ばれることもある。

「学ぶ利点は、あるの?大変そうで、あまり便利に思えないけど……」
「習得が容易ではない上に効果が限定的な学術魔法だが、理論を理解すれば実に様々な性質の魔法に応用して使い分けられる汎用性がある。特にステータスに影響を与える『魔導』に関しては学術魔法の方が圧倒的に使い勝手がいい。後はそうだな……基本的に詠唱の必要がなく、スペルを一言唱えるだけで発動する。その道を極めれば強力な魔法を連発することも可能だ」
「なるほど……」

 オラリオ内にいても意外と知らない事は多いんだ、とアイズは意外に思った。
 魔法はとりあえず使えて相手を倒せればいいと思っていた部分もあったが、アニエスという女の子の力にはある程度納得がいった。
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