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猫の憂鬱
第4章
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無言の気配にコウジは目を開け、見た事もない男が立っている事に肩を強張らせた。
「あの…、何方ですか?」
「あんた、どっかで見た事あると思った。」
「はい?」
妙なイントネーションと男から出る胡散臭い雰囲気にコウジは布団を握り締めた。
「あんたアレよな、今年初めに、ド派手な事故起こした人よな?四台で。アウディの人。」
「え?はい…」
今更其の、軽自動車側の関係者が何かしに来たのかと、単調な声もあり一層恐怖を感じた。
「わい、ベンツ乗ってたアホ女の旦那。」
「あ…!」
云われ、記憶が流れた。
そうだ、此の声。此の妙に上擦った単調な西訛りの声、カーテン越しに聞こえていた。
「其の後、どんな?」
「え?何が、ですか…?」
「あのアホガキ共からなんかされてない?」
「其方が用意して下さった弁護士さんのお陰で…」
「そ、なら良かった。」
ひょこん、と男の後ろに居た女が顔を見せ、相変わらず派手な顔と鋭利な爪を持つ手を振った。香水の匂いで鼻がもげそうだった。
「あの…」
「いやな、今日来たんは、嫁が用事あるて。」
「あん時の弁護士がな、雪村さんと連絡取れんてゆうたんよ。あっちから金取れたから其れ知らせたいて。あんた、電話何処やったん?」
「あ、警察に、あります…、充電も無いかと…」
「警察…、あんた、何したん?痴漢?」
ストレートな女の物言いにコウジは黙り、得体の知れない化け物を見る目で見返した。
抑、痴漢で捕まったのなら、何故入院している…其れも外科病棟に。少し足らないのだ、此の女は。
「そら御前や、歩く猥褻物。無い乳出して、何がしたいんですかね。いっつもパンツ見せて、頭おかしんか。」
「で、あんた、如何すんの?金。もっと取る?取ろか?」
金、金、金…皆、金の話。
辟易した。
コウジは鼻から息を抜き、僕はもう要らないので、と女の好きにさせた。其の消沈する態度に、誰が座って良いと云ったか、女は勝手にベッドに座った。一体何色なんだと聞きたい髪を女は掛け、大振りなピアスを見せた。
「雪村さん、如何したん。暗いよ?」
「御前が喧しいだけや。」
「僕、退院したら立件されるんです。」
ええ、と女は目を開き、弁護士要る?、と滅茶滅茶な事を云った。無言の男は眉間を撫で、其の暗い表情にコウジは同情した。女のいう弁護士を使えば、其の弁護士とやらが引き出した金を又渡さなければならない。其の弁護士じゃなくとも、国連の弁護士でも雇うつもりは無い。
「御前には関係無いねん。蓬餅食べさすぞ。」
「え?蓬餅?あー、食べたい食べたい!」
「おー、そうかそうか、ほんなら食べましょ。ほんで死ね。はよ死ね。」
女の肩に腕を垂らした男は、口座にもう振り込まれてるんで其れだけ伝えに来た、と纏わりつく女を鬱陶しそうに払いながら云った。鬱陶しいの
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