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猫の憂鬱
第4章
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いの外痛かった。
「長谷川を出したのは誰です?博士の主治医は僕ですよ?其れを無視して出したのは誰です、云ってよ。」
「長谷川は、何処も問題無いやないか!御前がでっち上げたんやないか!」
「あぁるでしょぉう?」
裏返した声で時一は云い、大きな目でじっと見た。
「僕、云ったよね、博士は、他人に危害加えるって。木島さんにしてる事って、そうだよね?問題起こしてんじゃん。戻す?ねぇ、戻してあげようか?」
「御前…」
「黙ってたよ、宗一の為に。でもね、雪村さん返せっていうなら、博士、返してよ。」
「どんだけ、どんだけ汚いんや、御前は!長谷川の次は彼奴か!」
「汚いのはどっち?」
時一は云う、汚いのは宗一であり、課長であると。
「博士の事は、もう良いよ、如何やったってあんたが抱え込んでんだ。でもね?雪村さんは?可哀想、彼の方の所為で壊れちゃったよ。」
そういう訳だから帰ってね――。
手を離した宗一はやり場の無い怒りを如何したもんかと、けれど手を上げれば、機嫌一つで自分に折檻繰り返した父親と同じになる。其れを時一はよぉく知っていた。
怒りに吐きそうだった、もう逸そ、吐いてやろうか、其の愛らしい顔に吐き出してやろうか。
靡いた白衣に時一は笑顔で手を振り、ドアーが閉まった時、顔から力を抜いた。其の顔が鏡に映ったのだが、其れはよくよく、宗一が憎んで憎んで憎み切った父親の顔そっくりだった。
無表情のつもりで自分は居るのに、其の顔にははっきりと笑顔があった。
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