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猫の憂鬱
第4章
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コップを拾い、捨てた。
「僕は、罪を認めてるのに!実刑で良いのに!其れを望んでるのに、隠蔽された!」
「隠蔽…ですか。」
「判るんですよ、頭では、課長さんの仰ってる事!僕の所為でもう後二人の人生滅茶苦茶になんか出来ませんよ!でも、だったら、僕は如何したら良いんですか。雪村さんに、涼子に、謝罪さえ出来ないんですか…?」
混乱と息苦しさにコウジの目から涙が流れ、至って冷静に時一はコウジの頭を抱えた。
「大丈夫ですよ、違う場所で、罪を償いましょうね。」
「痛い…、嗚呼!首が痛い!」
「興奮して体温が上がったからですね、“鎮痛剤”、打ちましょうか…」
コウジの頭を抱える時一は、入って来た看護師を見えないように、大丈夫だと繰り返した。すぅっと冷たい液体が腕に流れ、笑顔の時一を見た。ぐらっと視界が揺れ、強烈な眠気が来た。
「え…?」
「大丈夫です。僕が、守ってあげます。」
真横に避ける時一の口元を見たコウジはベッドに倒れた。警戒心の後に出て来たのは、嗚呼此れで、も何も考えなくて済むんだ、という安堵感だった。
コウジの寝息を知った時一は前髪を撫で、喉奥で笑った。
「運んで。」
事務的に顎をしゃくり、看護師達に指示したのだが、雪崩れ込むように、宗一側の看護師達が現れた。
「一寸、一寸何してるんですか!」
「煩いな、僕の所に運ぶんです。早く運んで。」
「菅原先生から御指示は御座いません!精神面なら、此の病院の医者が診ます!」
喚いていた宗一側の看護師は、無言の時一に黙り、其の目に汗を吹き出した。
「皆んな、宗一宗一って、煩いよ。何が偉いの?あんな医者。僕の方が、うんとずっと優秀だよ。」
「先生に、連絡して…」
看護師の小さな声に、何で?、動き掛けた看護師は立ち止まった。静かな空気が流れ、コウジの身体は指示通り運ばれた。
「大問題ですよ、菅原さん…」
師長が云った。
「抜糸だって、未だなんですよ…?」
「僕の病院、舐めないで。精神病院ですよ?外科医位居る。日に何回、患者が血を流すと思ってるんですか。本当、感心するよ。も、吃驚するよ、折ったボールペンだよ?何考えてるんだろう。」
「菅原先生が、お許しになる筈…」
「だからさ、宗一出すの止めてって、云ってるじゃないですか。」
大きな目が四人の看護師を捉えた。
「宗一が怖くて精神科医なんかやってらんないよ。退いて下さい、帰りますから。」
時一は云うと其の儘病室を出、残された看護師は床に座り込んだ。
宗一の雷が落ちる。
考えただけで恐怖が湧き出た。一人に至っては泣き出し、もう駄目だ、もう駄目だ、と頭を抱えた。師長は笑いながら頭を動かし、如何しよう、と身体を渦巻く恐怖を全身で表した。
「やだ…、やだやだ!僕逃げます!僕、無関係ですから!」
ばくつく心臓を叩きながら、一番若
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