第4章
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なら肩に腕を垂らしゃなきゃ良いじゃないか。
「あの、本当に要らないんですけど…!」
「ええねん、阿保から引いた金や、あんた、如何せ一年位で出て来るもん、五百万位やけどな、出た後、人生持ち直すのに使こたらええよ。」
煩いねん、と女の顔を追いやる男の背中を見た。
え……?
見知った人物の横に立つ女の姿に、コウジの様子を見に来た課長の足が止まった。
なんで、由岐城の娘が此処に居るんだ。
電話を鳴らしてみるか?けれど男の番号等知らない。他人の空似にしては、男も、女も似過ぎている。
「あ、課長さん。」
「今の男、なんで御前に会いに来たんだ?」
挨拶も無くいきなり課長は云った。大部屋なら他の患者の…と考えられるが、あの二人は確かに此の個室から出て来た。
「いえ、彼は付き添いで、用があったのは女性の方です。」
「なんで?」
状況を聞いた課長は、御前もとんでもない女に関わったな、とコウジの運悪さを嘆いた、此処迄運悪い人間もそう居ない。同情されたコウジは愛想笑いで返し、所で今日は、と聞き返した。
「御前はやっぱり、立件しない事にした。実名報道もしないし、抑に、ニュースにさえなってない、今更報道はしない。」
「何故です…、其れじゃ…兄の刑が軽くなるじゃないですか!三年位で出ますよね!?駄目です!あんなの野放しにしたら!」
「あのな、タキガワ。」
課長はパイプ椅子に座り、腰を曲げた。肩から三つ編みが垂れ、揺れた。
「御前の気持ちは、判るよ。あの男は更正しない。性根が腐り切ってる。あんなのが更正するなら、刑務所ガラ空きだよ。」
柔らかいが、其の声にはしっかりとした怒りが練り込まれていた。
「御前を実刑にしたら、確かにセイジの刑は重くなる。下手したら無期になるかも知れん。」
「だったら…」
「御前、今、自分が、何の名前か、判るか?」
課長の言葉にコウジは口をしっかり結んだ。
「御前は確かに、タキガワコウジだ。でも、雪村凛太朗でもあるんだよ。御前を実刑にするって事は、全く関係無い、九年前に死んだ、雪村凛太朗が、罪を被る事になるんだ。そしたら、雪村凛太朗の親族に迷惑が掛かる。親族の中に、警察官が居たら如何する。全く関係無い、タキガワコウジの所為で、其奴、クビだぞ。」
「其れは…」
「雪村には、親族がきちんと居る。御前が殺す前から絶縁状態だったから今迄問題無く過ごせてた。向こうからも連絡は無かったよな?」
「はい。」
「三日あれば、調べられるんだよ。」
コウジは俯き、警察官の親族が居たんだ、と思った。
「父親と弟が警察官だったよ。」
「……。」
「とはいっても、本庁のエリートでも無いし、俺達みたく管轄の刑事でも無い。ほんっと、田舎の駐在さんだったよ。優しい顔してな。雪村の田舎、知ってるか?」
「本籍には、島根ってありました。
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