2部分:第二章
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第二章
「それについてはですが」
「発言を許す」
裁判官はその検事にやや後出しだがこう告げた。
「それで何か」
「はい、被告は原告の家にいる家畜です」
検事が主張するのはこのことだった。
「家畜なのです」
「それはその通りだ」
裁判官は検事のその言葉に納得した声を出した。
「その者は確かに原告の家畜だ」
「我が子や使用人ならいざ知らず」
検事はさらに言う。
「家畜です。それならば躾として当然ではないでしょうか」
「躾か」
「我が子や使用人であっても」
検事は自分の言葉を少し戻してみせた。そのうえでさらに話すのであった。彼もかなり真面目な調子で話を進めている。
「鞭で打ってそれで教え込みます」
「うちもだよ」
「うちも」
「うちも」
「そうされていたしそうしているよ」
「そうだよな」
観客達はここでまた話すのであった。
「それじゃあ家畜でもな」
「鞭で躾けるのは当然だよな」
「そうなるよな」
「ああ」
観客達は検事の言葉に傾いていた。そしてである。有罪か無罪かを決める裁判官とその補佐達もだ。検事の言葉にひそひそと話し合う。
「ううむ、確かにな」
「子供や使用人に対してもな」
「鞭を使うな」
「そうだな」
観客達と大体同じことを話す。
「それなら家畜なら余計に」
「ああ、鞭を使うのはな」
「当然だな」
「そうだな」
「それではだ」
「この場合は」
天秤が一方に大きく動いた。しかしである。
弁護士もだ。尚も言うのであった。
「被告が原告を襲ったという証拠ですが」
「何か」
「それはあるのでしょうか」
こう話すのであった。
「それはどうなのでしょうか」
「証拠か」
「その襲った現場を見た者はいるのでしょうか」
弁護士はこのことを話すのであった。
「その目撃者は」
「馬鹿を言うものだ」
ここで言ったのは原告であった。顔を顰めさせて言っている。
「俺が証拠だ」
「貴方がですか」
「そうだ、俺が証拠だ」
こう主張するのである。
「実際に襲われてそれを見た俺がだ。何よりの証拠じゃないのか」
「いえ、それはなりません」
「ならないだと!?」
「はい、なりません」
弁護士は原告に対して冷たい感じで答える。
「そうはです」
「それはどうしてなんだ」
「当事者だからです」
だからだというのである。
「それでなのです」
「当事者は証拠にはならないというのか」
「はい、当事者の意見はどうしても主観的なものになってしまいます」
弁護士が指摘するのはこのことだった。今度はこうした主観かどうかという話であった。
「ですからそれはです」
「じゃあ誰の話だったらいいんだ」
「あくまで第三者の、です」
弁護士は
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