第三章
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「あの二人のことはね」
「お二人共引かないところは引かないですし」
「長引きそうですね」
「ナチスまで関わってきていますし」
「政治的な問題にもなっています」
「そうだよ、何年もかかるかな」
ワルターはそこまで見ていた、この問題が長期化するとだ。
実際に二人の対立は長引いた、それは第二次世界大戦が起こりナチスが倒れてもだ。フルトヴェングラーはナチスについてはシロと断定されたが。
トスカニーニはまだだ、こう言っていた。
「あいつはナチスだ!」
「ナチスのところにいたからだ!」
こう言ってだ、挙句には。
「あいつは偉大な素人だ!」
「それは違う!」
それに対してトスカニーニも言った。
「政治と音楽は別だ!」
「あいつの言うことは間違いだ!」
「あいつがようやく辿り着いたところから私ははじまったのだ!」
戦後も顔を見会わせずともこんな調子だった、だが。
人は必ず死ぬ、まずはフルトヴェングラーが。そして次にトスカニーニも。ワルターはその二人を見送ってから言った。
「死ぬまで和解出来なかったね」
「はい、残念ですが」
「そうなりましたね」
「偉大な音楽家達がいがみ合い続けた」
このことについても言うのだった。
「残念なことだよ」
「よくある話ですが」
「確かにそうですね」
「ですがせめて天国では」
「仲良くしてもらいたいですね」
「全くだよ、私ももうすぐ死ぬだろうしね」
二人が冥界では仲良くしていてそれを見たいと思うのだった、そしてワルターもまた天国に行ったがそこでも。
二人は言い合っていた、頭には輪があるがそれでもだ。
雲の上においてだ、お互い顔を真っ赤にして言い合っていた。
「ナチスの番犬!ヒトラーの飼い犬!」
「何度も言うが政治と音楽は別だ!」
「そんな理屈が通用するか!」
「そっちの音楽こそヒトラーの演説だ!」
「私はナチスではない!」
「それを言うなら私もだ!」
こんな調子だった、その二人を見てだ。
ワルターはやれやれと言った顔でだ、やはり天国に来ている友人達に語った。
「死んでからもとはね」
「全く、厄介ですね」
「天国でも言い合っているとは」
「しかも天国にもそれぞれの支持者、信奉者の人達がいて」
「難しいことになっていますね」
流石にナチス関係者は天国にいない様ではあるがだ。
「お二人は確かにその音楽で多くの人を感動させました」
「その功績で天国に来られましたが」
「その天国でもですね」
「言い合っておられますね」
「やれやれだよ」
また言ったワルターだった。
「この二人はずっとこうかな」
「嫉妬は怖いですね」
「女性絡みであるなら」
「そこに色々入っているのなら」
「余計にですね」
「そうだね、本当にね」
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