第一章
[2]次話
ケツアルカトル
その神は民達に言った。
「私は去る、しかし必ず戻って来る」
「それは何時ですか?」
「何時になりますか?」
「一の葦の年だ」
神は民達に答えた。
「その時に戻って来る、だからだ」
「我々は待っていればいいのですね」
「貴方が帰って来るその年を」
「一の葦の年を」
「その年を」
「そうだ、必ず戻って来る」
神はこのことは強く約束した。
「だからだ」
「その年に、ですね」
「貴方が戻ってくれば」
「その時はこの神殿においてですね」
「貴方をお迎えすればいいのですね」
「そうして欲しい」
神の言葉は切実なものだった。
「是非な」
「わかりました、では」
「私達は貴方を待っていてです」
「そしてです」
「一の葦の年にです」
「貴方を神殿で迎えます」
この神を祀る神殿でだ、彼等もこのことを約束した。
「貴方もお待ち下さい」
「私達が死のうともです」
「子や孫達が貴方を待っています」
「一の葦の年に」
こう言うのだった、神に。
神も彼等の言葉を聞いてだ、また言った。
「必ず戻る」
「一の葦を待ちましょう」
「私達がもう一度会う年を」
民達も約束してだ、そしてだった。
神はその場を去った、項垂れながらも。
それから果てしない時が流れた、神が去った後その国には異邦から来た者と異邦から来た神が支配した。だが。
ある国においてだ、とある学者がこんなことを言った。
「中南米の神は興味深いな」
「といいますと」
学生がその学者に応えて問うた。
「どんな神がいるんですか?」
「蛇やジャガーの姿の神がいてな」
「ああ、獣神ですか」
「中南米の宗教は今はキリスト教だが」
「あれはスペインやポルトガルが征服して」
「そしてだ」
「信仰するように強制しましたね」
生徒もこのことは知っていた。
「それは私も知っています」
「そうだな、歴史にあるな」
「はい、それでキリスト教が入る前の中南米の宗教ですか」
「それが面白い」
「蛇やジャガーの姿の神がいて」
「その宗教文化、考え方もだ」
そうしたものもというのだ。
「面白い、特にだ」
「特に?」
「緑の鱗に翼を持つ姿の神がいてだ」
「それがその蛇の神様ですか」
「他にも蛇の姿の神様がいるがね」
学者がここで話すのはその神のことだった。
「その緑色で鳥の翼を持つ神様がね」
「特に面白いですか」
「人間を創造して農業や色々な技術を教えた」
「凄い神様ですね」
「その神様のことを今調べているけれどね」
「それが面白くて」
「いい研究が出来ているよ」
学者は微笑んで学生に話した。
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