第一章
[2]次話
老いても
中華街はそれこそ世界中にある、勿論日本にもだ。
関西では神戸にある、その中華街にある噂が出ていた。
「へえ、理髪店の陳さんがか」
「酔拳の達人らしいぜ」
「あれで実はな」
「滅茶苦茶強いらしいんだ」
八条学園高等部、その中華街がある神戸にあるこの学園の中でだ。男子生徒達がかなり興味深そうに話していた。
「それがな」
「それが?」
「それはっていうと?」
「いや、あの人な」
それこそ、というのだ。
「もう八十らしいぜ」
「ああ、八十か」
「もうそんな歳か」
「思えばかなりな」
「八十になったらな」
「流石にな」
「幾ら拳法の達人でもな」
「それでもな」
高齢だ、それでというのだ。
「幾ら昔は達人でもな」
「今はか」
「流石に動けないか」
「無理か」
「そうだな」
「それじゃあな」
今のその彼はというのだ。
「動けないか」
「八十のお爺さんじゃな」
「昔は達人でも」
「それでも今はな」
戦えないだろうというのだ、それでだった。
そのうえでだ、その彼等の中でだった。
池田夏男、日焼けした肌に赤髪を短くしてパーマでありアフリカ系アメリカンの様な外見にしている彼がだ、笑ってこんなことを言った。
「それ確かめてみたいな」
「っていうと中華街に行ってか」
「そのうえで」
「その爺さんに会って」
「それで確かめるんだな」
「ああ、俺だってな」
夏男は仲間達に不敵な笑みを浮かべて言った。
「ボクシングやってるからな」
「その腕で確かめる」
「拳でだな」
「そうだよ、やってやるぜ」
その不敵な笑みでの言葉だ。
「俺のこの拳でな」
「まあ八十の爺さんだからな」
「怪我とかさせるなよ」
「お年寄りは大事にしろよ」
「幾ら何でもな」
「ああ、わかってるぜ」
夏男もわかっているという顔でだ、仲間達にこのことについては素直に返した。
「俺はこんな外見だけれどな」
「それお袋さんの血だろ」
「パーマにしても」
「アメリカから来た」
「ああ、今も英語学校で先生やってるよ」
実は夏男はアメリカ人とのハーフだ、母は日本に英語教師として来てそこで彼の父と会って結婚してだ、彼が生まれたのである。
「だから俺もだよ」
「ファッションじゃなくてな」
「その顔なんだな」
「そうなんだよ、だから先生にも何も言われないんだよ」
一見すると悪ぶっている外見でもだ。
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