第八十話
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マーケットが映る……二階は生鮮食品を売っていたらしい。
もちろん生鮮食品などもうどこにもないが、確実にザビーはここに隠れている。こちらを見ている気配、極限まで消している息づかい、場の殺気にもにた雰囲気――姿は欠片も見えないものの、それらから俺は、ザビーがここにいるのだと確信する。爆弾でもあれば投げつけてやるのだが……いや、爆風に紛れて逃げられるのがオチか。なんにせよ、ないものねだりをしても仕方がない。
……俺が今持っているのは、この両手に持った散弾銃のみだ。
「……当たれ!」
呼吸を一つ。それから俺は両手にAA−12を構えると、ためらいなくその引き金を引く。散弾銃、という名前に反して銃弾が広範囲に拡散するようなことはない。あくまで、複数の弾丸が同時に発射される――かのようになる、というだけだ。
このAA−12が擁するのは9発の弾丸。元は冷蔵庫だったであろうものを容易くぶち抜き、かろうじて保っていた原形は既に見る影もなくなっていた。……『当たれ』などと叫んではみたものの、場所が解らないので当然当たるわけでもない――が。
このAA−12の真価はここからだ。
「…………っ!」
俺は一度撃ってからも引き金を引き続けている。それに同調してAA−12の動きも止まらず、その九発の弾丸を同時に発射する散弾が、銃の側頭部から空薬莢を排出しながら永遠に発射され続ける。その度に、一発一発が一撃必殺の威力を持った弾丸がフロア中に撒き散らされ、銃身を逸らすだけで破壊は異なる場所にも広がっていく。
フルオート散弾銃。ショットガンとマシンガンを組み合わせたようなソレは、残弾がある限り破壊をばらまいていく。それはまさしく鉄で出来た暴風雨のようで、触れようともすれば一瞬でガラクタへと成り下がる。長いようで短い全弾発射が終わった時には、もはやフロアはフロアとしての原形を留めてはおらず、純然たる廃墟の様相を呈していた。……あとは落ちている空薬莢のみ。
弾薬を撃ちきったドラム式のマガジンを廃棄し、新たなマガジンをAA−12に装着し直しつつ、俺はこの銃を買った時のことを思い返す。借りた拳銃がダミーターゲットに当たらず、ヘタクソと罵った後にリーベがこの銃を俺に勧めた時の言葉。
『いっぱい撃てば当たるんじゃない?』
下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる――とは言うものの。それが正しいかは、その時の俺には解らなかったが……どうやら、あながち間違いでもないらしい。廃墟の片隅に転がっている、黒色の物体がそれを証明していたのだから。
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