第八十話
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されていたに違いない。
「くっ……」
油断していた――と自戒すると、『蜂』という名前には似つかわない、むしろアリを思わせるパワードスーツに身を包んだザビーが足音もなくこちらに走ってくる。もちろんただ走ってくる訳ではなく、ザビーが両手で構えていた《M1カービン》と呼ばれるライフルが、こちらに狙いをつけて火を噴いた。その狙いは寸分違わず、俺の身体へと《予測線》を表示させた。
《弾道予測線》。このGGOのゲームの特徴の一つであり、視界に捉えている相手からの銃撃に限り、その弾道を予測した線を表示させる機能。銃を撃つ側のサポートである《着弾予測円》と対をなす、このゲームをゲームたらしめているもの。
……だが、このゲームに来るまでに《予測線》というものに縁はある。かのデスゲームにPoHに殺された時にたどり着いた、集中力を研ぎ澄まし相手の攻撃の気配を読む術、《恐怖の予測線》というある種の境地が。……予測線のことならば俺にとて、あのデスゲームを生き延びた一日の長がある。
「……っ!」
胴体に向けて放たれていた銃弾を飛び退けて避けながらも、背後にあった車を盾にするように立ち回る。幸いなことに、ザビーの使うライフルは車のボディを貫通するほどの威力はないらしく、車に銃弾が当たる金属音が鳴り響くのみ。もちろん何かの映画のように、ガソリンが引火して車が燃え上がるようなこともなく――何しろガソリンが入っていない――俺は車の影から少し身を乗り出すと、見よう見まねでAA−12を構える。
……が、その時にはもうザビーはその場にいなかった。やはりその足音を感じさせなかったが、そのアリのようなスーツだけは視界に捉えられ、目と鼻の先にあるショッピングモールに飛び込んでいた。こちらに背中を見せてはいたが、まずここからでは当たるまい。
「……なるほど」
だが、そうショッピングモールに逃げるザビーを見て、俺はそう小さく呟く。ザビーの基本戦術は、あの足音を消すスーツの効果をフルに使った、奇襲からの不意打ち。軽量化したライフルを持って全速で近づき、敵に奇襲をして外したら逃げてもう一度、と繰り返していく腹積もりだろう。一度視界に捉えることが出来なくては、このゲームの肝である弾道予測線は表示されない。
ならばここにいることは、少なくとも下策。ショッピングモールに逃げたザビーを追いたいところだが……相手もそれは承知だろう、どこかに待ち伏せられていれば、足音もなく奇襲されてそこで終わる。
――が、俺はショッピングモールの中に入ることを選択した。ザビーが蹴破った自動ドアを通りながら、確か相手は二階に行ったと思い返し、正面玄関の目の前にある階段を油断なく上っていく。両手にAA−12を構えながら階段を駆け上がると、俺の視界には巨大なスーパー
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