第八十話
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ノンと別れて男子更衣室に入ると、自然と張り詰めていた空気が消え、一度深く息を吐く。
「やっぱり、プロがいるとかいうゲームは違うな……キリトはどう……ん?」
このGGOの特徴とも言える、《ゲーム内通貨還元システム》を利用している者たちは、仕事のようだと揶揄して『プロ』などと呼ばれているそうだが。景品がある大会とあらば、そういう輩も参戦しているのだろう。自分よりも遥かにネットゲームに造詣の深い、ゲーマーのキリトにも意見を聞こうとしたものの……はて、キリトの姿が更衣室のどこにもない。
「キリト?」
もう一度呼びかけて反応がなかった時点で、まさか――という危惧が頭の中で警鐘を鳴らす。着替える前に男子更衣室の扉を開けると、鋭い音とともに女子更衣室から弾き出された、頬が日焼けのように赤く染まったキリトの姿が視界に飛び込んできていた。
「……ふう」
――さて、その後あからさまに機嫌が悪くなったシノンに謝り倒し、なんとか試合と試合開始前の事だけ教えてもらった。辺り一面、全てが暗闇の場所で俺は息を整え、現実の試合開始前のように集中する。
……その後、アイテムストレージを操作していくと、俺の手の中にずっしりと重い感触が伝わってきた。リーベに選ばれた、俺のこの世界における相棒たる銃……散弾銃と呼ばれる銃身。
《オート・アサルト12》――通称、AA−12と言われている散弾銃。軽量化カスタマイズを施されたソレは、この漆黒の空間でもなお、黒く光って存在感を示している。……使えるのかは分からないが、やるしかないのだ。
そうしていると、目の前に対戦相手の名前と対戦場所が英語で表記され――恐らくは《ザビー》という読み方の相手と、朽ち果てたショッピングモールが舞台となったらしい。忘れていたナイフを装備し直していると、他の場所に転移する感覚が身体中を支配していき、一瞬の閃光とともに俺の身体が別の場所にて再構築される。……この感覚も慣れたものだ。
「……よし」
目を開くと、そこは既に先程の待機場所ではなく、見慣れた大型のショッピングモール。ただし営業しているどころか、人の気配すら感じられないが。ガラスも割れたまま修復されておらず、そう言えばこのゲームの部隊は世紀末だったか――と思いだす。
さて、俺のいる場所は駐車場だ。廃墟となってはいるが車が多数置いてあり、遮蔽物が多く見晴らしが悪い。すぐそこにはショッピングモールへの入口があり、内部へと侵入することも出来そうだ。
「――――ッ!?」
どうするか、と考えるより先に、突如として俺の視界の端に人型の物体が映った……かと思えば、その物体がこちらへと急接近してきていた。あちらはもうこちらを捉えていたらしく、偶然にも視界に映っていなければ、そのまま撃ち殺
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