暁 〜小説投稿サイト〜
鎧虫戦記-バグレイダース-
第36話 全ての奇跡には必ず理由がある 
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
どうせ嘘だろうと思った。
会話を行うための冗談だと解釈していた。
だが、彼の声は真剣だった。

「ちょっと手ぇ触ってみろ。別に変な意味じゃねぇぞ?」

俺はホークアイの手に触れた。
ちょっとザラザラしているのは
さっき俺が岩を分解した時の砂ぼこりだろう。
そして、それとは別の事に俺は気付いた。

 フル‥‥‥フルフル‥‥‥‥‥

その手が小刻みに震えていたのだ。
これはわざとしているわけではないようだ。
手から伝わる何かが俺に即座に理解させた。

「オレさ‥‥‥‥小さいころに一人姉ちゃんがいたんだ」

ホークアイは少し頼りない声で語り始めた。

「オレは本当に小さかったからあんまり覚えてねぇけど
 いっつも抱えられてた事だけはうっすらと覚えてる。
 姉ちゃんは10歳にならないぐらいだったかな。
 オレは優しい姉ちゃんに毎日甘えてた」

彼は軽く頭をかいた。

「でもある日、変な格好をした奴らに
 姉ちゃんが誘拐されたんだ。
 だが、オレは何故かさらわれなかった」

頭をかいていた手を離して、その手の拳を力強く握った。

「小さい頃、生きるのに精一杯だったオレは
 夜というのが心底、恐ろしかった。
 物の陰から何かが這い出てきそうで。
 何かが姿を隠していそうで本当に怖かった」

握っている手の手首を、反対の手で掴んで握った。

「みんなに会ってからはそんなになくなったけど
 今でも、暗くて狭い所は正直苦手だ。
 息苦しくて‥‥‥怖くて‥‥‥泣きそうだ」

 フルフル‥‥‥フル‥‥‥‥

それでも、手の震えは止まらなかった。

「でも、お前の胸にうずまってる時だけは
 何故かここが怖くなかったんだ」

それを聞いた俺は少しムッとした。
そうか、だから昔の話をしたのか
と、俺は心の中で怒りを抑えていた。

「それは俺の胸が10歳並の大きさだからか?」

俺は苛立ちの混ざった声で訊いた。
ホークアイはいやいやいや、と
忙しく両手を振って否定した。

「なんつーかなぁ‥‥‥‥」

ホークアイは頭をかきながら、しばらく考え込んだ。
言葉にするのが難しいのだろうと俺は察した。

「姉ちゃんと同じ何かを感じるっつーか‥‥‥‥何つーか」

言葉の歯切りが悪い。やっぱり言いにくそうだ。
俺もホークアイの言いたい事は何となくは分かる。
でも、それをいざ言葉にしてみろと言われると
やっぱり難しい。
ホークアイがしばらくうんうん唸った後に
衝撃の一言をつぶやいた。

「‥‥‥‥ジェーンって、もしかして俺の――――――――」

その先に何を言おうとしていたかが
俺には何故か読み取れた気がした。

「はぁッ!?な、なな何言って
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ